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『話せる島記・外伝』

『第零章・話せる島』

『第十六話・血の盟主 ヌルカ』

「多分、親玉・・・ヌルカをヤっちまえば勝てる。ザコは無視して大丈夫なはずだ。ヌルカに集中攻撃しよう。それには援護が必要だ。だから、剣士ひとりとメイジひとりがペアになってフォローする。これでどうだ?」

ダークエルフの剣士さんが立てた作戦。血の主、パルチザンのアジトの主である、ヌルカとの再戦に向けた作戦会議だ。行きずりとはいえ、同じ興味でもってこの場所に集まった面々。戦うために来た人もいれば、わたしたちのように見学にきて否応無く巻き込まれた人もいるだろう。しかし、今は戦いに向けて一丸となっていた。

他にいい案も浮かばないのか、ダークエルフさんの作戦に乗る形になった。

「じゃあ、ペア作ろう。剣士とメイジと・・・ひぃふぅみぃ・・」

わたしも、その場に居合わせたメンバーの職種を大ざっぱに分けて数えてみるとあることに気付いた。

「ん?剣士は野郎ばっかりか。メイジは女の子、と。数もちょうど同じじゃん」

そう、その通り。

「ちょおっと待って。メイジ、っつっても、うちらウィザードだよ?」

みづほさんが突っ込みを入れる。

「まあ、細かいことはこの際、気にしない、気にしない」

いや、細かくはないと思うんだけど・・・・

「んじゃ、うちらは猫召喚してちょっとでも攻撃できるようにするわ」

「OK、OK、よろしく。そしたら、そことそこ、ペア組んで。そっちは、彼女と」

何故かてきぱきと仕切り、指示して行くダークエルフさん。手際がいいんだか悪いんだか・・・わたしはアミノ式と、と思う間もなく、別の人とペアになることになった。

「よろしく」

「こちらこそ」

なんか違うぞ。

「うんうん。我ながらいいカップリングだ」

そうじゃないでしょ、と誰も突っ込まなかった。ある種、違う企画になってしまっているようだが、皆その状況を面白がっている様子だ。どうみてもこれから決戦、と言う雰囲気ではなかったが、これはこれで、確かに楽しいかもしれない。

初めて会った人とペアなんて、ちょっと恥ずかしいけど。

もっと戸惑っているのはウィザードであるみづほさん、arameさんだ。メイジ時代に覚えた回復魔法があるにはあるが、その効力はクレリックのわたしたちとはかなりの差がある。その分、攻撃魔法の威力はウィザードの方が上な訳だし、なにより、普段、回復の作業なんて滅多にしないんだから、戸惑いも大きいだろう。

しかし、なし崩しにカップルができあがり、それぞれペアになって挨拶を交わす。同時に、補助魔法を相手にかける。ウィザードさんたちは猫も召喚して準備する。

「よーーし、んじゃーいきますかー」

「おーーっ!」

勢いって、怖い・・・・勢いでリーダーになったダークエルフさんの根拠のない勢いでこれより突入開始。そのダークエルフさんを先頭に突撃する剣士さんたち。わたしたちメイジも後を追ってアジトの門を通る。大丈夫なのかと考えている暇すらない。

門の上からは矢が雨のように降り注ぐ。もちろん最初っから立て続けに回復魔法を唱えることになる。

「余裕があったらメイジも攻撃。標的はヌルカのみだっ!」

余裕なんかございませんってば。

ペアの相手に回復魔法を唱えるので精一杯。しかもペア以外の人の体力の減りが激しく、そちらのフォローにも回らざるを得ない。arameさん、みづほさんたちの回復魔法じゃやっぱり追いつかなかったのだ。二人ともそれを悟ったのか、魔法を攻撃魔法に切り替え、ヌルカに攻撃している。それでなくても、本職のわたしでさえ、回復が追いつかない!

ヌルカ本人だけではなく、回りの近衛兵、それに門の上の弓からの攻撃。さらにはヌルカに対して回復魔法がかけられている。門の上には回復を担当するマフムまでいたのだ。

ヌルカを近衛兵が取り囲んでぎっちり護衛しているため、ヌルカに剣を当てることもままならない様子。

そんな状況なので、わたしたちメイジのマナもみるみる不足して行く。おまけに、剣士さんを回復させているわたしたちメイジも攻撃を受けるため、自分自身の回復もしなければならない。こんな状態がそう長く続けられるとは思えない。そろそろ、ヌルカを倒してしまわないと・・・戦況はいかに?

しかし、現実はそんな生易しいものではなかった。

「何がヌルカヤっちまえばだ! 全然歯が立たんじゃないかっ!」

「えーと」

血の気が引くのがわかった。

「ヌルカの体力、これっぽっちも減って無いぞっ!」

仲間の回復に忙しく、ヌルカの状況を見れない。でも、どうやらそういう事らしい。それなりのダメージを与えることすらできていないのだ。力の差がありすぎる。おそらく、人数も全然足りないのだろう。

「そのー」

「うわっ、やられたっ」

メイジのマナが尽きると、剣士さんの体力も尽きる。ばたばたと倒れる人々。召喚された猫たちもすでに消滅している。はやこれまでか。

「あのー」

どうやら引き際らしい。引くことができれば、だけど。果たして間に合うか?

その時、誰かが叫んだ。

「戦略的撤退だーーー!!」

皆、同じ気持ち、考えだったのだろう。ここぞとばかりに逃げ出す。しかし、そもそも体力もマナも残り少なかった状態なので、門の外まで逃げ切れず、力尽きる人もいた。というか、わたしもその内の一人。アミノ式は逃げ切れたようだが、arameさん、みづほさんも道半ば、力尽きている。。

ししるいるい

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「ちょっと待っててね、回復したらすぐ助けるから」

逃げ延びた人から声がかかる。アミノ式もそうだが、やはり年齢と装備の差だろう。ウィザードの二人もわたしよりはずっと年上だけど、助からなかったか。

「おーい、オレも助けてくれ〜〜」

この声は・・・・

「いいよ、あんなバカ、放っといて」

「そんなご無体な〜〜」

この情けない声は、ダークエルフの剣士さん。放っておけ、と言ったのは相方なのだろう、同じグループの剣士さんだ。状況が状況なので、笑っちゃいけないんだろうけど、思わず吹き出してしまいそうになる。彼らの仲間は爆笑していた。

やっとわたしも起こしてもらい、少し回復してからarameさんたちも起こしてまわる。再度の撤退がまた時間を費やすことになった。

「おいおい、真面目な話、いいかげんに起こしてくれよ〜」

「いいからそこで寝てろ、このヌルカの近衛兵が」

「んだとー。ここまで来るのが怖いんだろー」

「バカ、そんなんじゃねえよ」

ヌルカの足元を見ると、例のダークエルフさんがまたもや踏み付けられていた。回復作業の間、そのダークエルフさんと仲間の剣士さんの掛け合い・・・と言うか、これは完全にののしり合いだな・・・が続く。わたしたちは苦笑するしかないんだけど、周りの人も一緒になって悪口の言い合いをしている。口ではそんな風に悪く言い合っていても、本当は仲の良い友達なのだろう。そういう意味では状況に反してとてものどかな空気が流れていた。

ヌルカの足元さんを除くメンバー全員が撤退を完了した。先に退避していた人達は回復も終え、手持ち無沙汰になったのか、お互いに剣を交え合っていた。ケンカや対決、と言ったシリアスなものではなく、悪ふざけに近い稽古のようなものか。本気で切り合っているわけではなさそうだ。

アミノ式はと言うと、その人達とさらに意気投合したらしく、一緒になって暴れていた。剣士さんの言葉を借りるなら「あのおバカさん・・・」である。

わたしたちは撤退に少し時間がかかったため、体力もマナもまだ回復していなかった。座ってぼーっとしている以外することはない。

いやいや、ぼーっとしてる場合じゃないか。

「ごめんね、arameさん、みづほさん」

「ん?なんでNarurunが謝る?」

「だって、何回も倒されちゃって・・・まさかこんなことになるなんて思ってなくて。巻き込んじゃってごめんなさい」

「へーきへーき」

「んだ。おもろかったし、いーじゃん」

「え?」

二人とも、全然気にしていない様子。

「しっかし、強すぎだろ、あれ」

ヌルカを指してみづほさんが呆れ顔で言う。わたしの話を逸らしてくれたのだろうか。

「魔法もぜんぜん効かなかった」

arameさんもうなだれている。もしかしたら自尊心を傷付けられているのかもしれない。

「効いてない訳じゃないんだろうけど。並の怪物とは桁が違うって感じだったなあ。猫もあっと言う間だったし」

みづほさんがすかさずフォローする。おちゃらけたように見えて実はとっても細やかなのかもしれない。

「うむ」

arameさんもそれは解っている、けど、と言いたいのかもしれない。普段、圧倒的なパワーで敵をねじ伏せる戦い方なので、ストレスも溜まったことだろう。

わたしは回復に忙しかったため、攻撃そのものは行っていない。攻撃したところでどうかなったってことは先ず有り得なかったろう。今となっては試してみることも不可能だ。一人ではどうすることもできない。今回に限っては、それなりの人数が集まって居たにもかかわらず、どうにもならなかった。世界にはまだまだわたしたちの知らないものがあり、敵わない相手も居るんだと解っただけでも良しとしなければならない。

「お? ヌルカ消えた」

「ホントだ」

声につられてアジトの方を見やると、その通り、ヌルカとその取り巻きたちが居なくなっていた。どこか別の場所に移動したのだろうか。大軍がぞろぞろ、と移動した訳ではなかったので、帰還スクロールのようなもので別のアジトへと飛んだのかもしれない。この場所に脅威はもうない、と判断したからだろうか。わたしたちでは相手にもならなかったのは確かに事実だ。

「起こせ〜〜」

ヌルカの足元・・・だった場所に大の字になって倒れているダークエルフさん。やっと皆が近付けるようになったので、彼の仲間が真っ先に近寄って・・・

「ぐはっ。何さらすんじゃ〜」

彼を思いっきり踏んだ。

「うりうり」

ぐりぐり。

「ぎゃああ」

体力を根こそぎもって行かれてるので、それ以上はどうにもならないんだけど、気分の問題ね。とっても痛そう。

「それぐらいにしといてやんなさい。リザ、行くわよ」

仲間のエルフさんが見かねて止めに入り、リザレクションを唱えた。剣士さんは素直に脇へと移動した。

「ふぅ・・」

ようやく起き上がることのできたダークエルフさんは、一息付くと、剣を握り直して、仲間の剣士さんに切りかかった。

「この野郎っ!!」

予期していたのだろう剣士さんは軽くその刃を受け流す。

「それじゃ、お疲れさまでしたー」

別のチームの人たちは、呆れたように、でも笑顔でこの場を後にする。戦っている二人も含めて、「お疲れさま、またね」と声を掛け合う。

「面白い人達だね」

ヌルカとの戦いで組んでいたパーティも解散したので、改めてarameさんたちとパーティを組み直し、その中で会話する。これなら他の人達に話を聞かれる心配はない。

「だな」

「見物するつもりがこんなことになっちゃったけど・・・・って、思い出した。アミノっ」

「ん?」

「あんたが突っ込んで行ったからでしょ」

「いや〜〜。見てたらウズウズして来てなぁ。こらえきれんかった」

はぁ・・・まったくこの人は。

「まぁまぁ。いいじゃん。こういうのも滅多ないんだし」

「んだ、んだ」

みづほさんもarameさんも・・・お祭り好きと言うか。

「せやけど、そもそも『面白そうやから見に来よ』とか言い出したん、Narurunやで」

はっ。

「そうでした・・・・」

わたしもお祭り好きなのね。とほほ。

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損ソン、ってな」

言いたい事はわかるけど。言いながら本当に踊らなくていいから。

「それじゃ、オレたちもう行くから」

見ると、仲間同士で戦っていた剣士さんたちも帰り支度をしていた。

「お疲れ様でした〜」

手を振り、「またね」と声を掛け合い、お別れする。後に残ったのは、わたしたち四人と、他数名。

さてどうしようか。

本当に、疲れたと言うのもあって、これからまた狩りに繰り出そうって雰囲気ではない。さすがのアミノ式も今はおとなしくしている。ふと周りを見ると、一人だけ何やら動き回っている人がいた。わたしたち四人以外の人。クレリックの女性だ。その人の足元を見てみると、なにやら文字が書かれつつあった。

『マ・タ・ク・ノ』

??

黄色く輝く文字。アデナ・アートだ。

この世界には独特な文化がある。アデナ・アートはその中のひとつで、少額のアデナを地面に並べて絵や文字を描く。世界のあちらこちらでそんなアートを見かけることがある。何かのメッセージのようなものであったり、落書きであったり・・・。文化として成立しているのは、地面に「捨てた」アデナを他の人が拾ったりすることがあまりないこと。まれに文化を解さない非文化人が拾ってしまうことも無くはないけど。基本的に、一度描かれたアデナ・アートはその場に存続する。時々、神様によって掃除されて消されてしまうこともあるけど。

しかしそれにしても「マタクノ」ってなんだ?

他のメンバーもそれに気付いたのか、彼女の描くアデナ・アートに見入った。作業は続いている。

「ノ」だった文字はやがて「ル」になった。彼女はその隣に新たな文字を描き続けている。

『マタクル`』

マタクル、またくる、また来る・・・?

彼女はせっせとアデナを撒き続ける。

『マタクルテ』

また来るて?

ちゃりーん、ちゃりーーん。

『マタクルデ』

「また来るで!」

全容が明らかになった時、彼女の作業も終わった。

確かに、今日はさんざんだった。だから、また、強くなって、ここに、ヌルカと対決しに、戻ってくる。そんな思いが込められているように思えた。

彼女は特に何も語りはしなかったが、このアデナ・アートがそれを物語っている。残った面々もそれを理解すると、誰からとも無く立ち上がり、そのメッセージの前に並んだ。もちろん、わたしたちも。

そして、雄叫びを上げる。

またくるで

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『マタクルデ!!』

いつか、また・・・・。

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