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『話せる島記・外伝』

『第一章・それぞれの道』

『第六話・エルフのファル』

友達の杏樹やエルはNarurunお姉ちゃんと一緒にいることが多くなった。サリューはここのところ見かけない。他にも数人、友達と呼べる人達もいなくはないが、皆それぞれの道に忙しい模様。てなことで、必然的にあたしは一人でウロウロとしていた。

ペットをもらっては販売を繰り返し、狩りで拾ったアイテムを売ったりして少しづつではあるが着実にアデナを蓄えつつあった。

今日もまたグルーディオ城の村からグルーディン港の村へと街道を走っているところだ。ちょうど捨てられた露営地の前を通りがかった時である。

街道のすぐ脇で一人のエルフの少女が弓を持ったオル・マフムに攻撃をしかけるとすぐに反撃を食らって倒されてしまった。さすがに知らん顔をして通り過ぎることもできず、いつもの調子で声をかけてみることにした。

「リザレクション、しましょうか?」

「おお、救いの神よ!」

「そんな大袈裟な・・・・いきますね」

「おねがいします〜〜」

滅多には使うことの無いリザレクションの魔法。つい呪文を忘れそうになるが、記憶を探して、なんとか思い出す。

「いきます」

この魔法、呪文長いんだよなぁ・・・やっとのことで呪文を詠み終えると、倒れているエルフさんに光りが宿り、生命力が戻る。

「よっこら〜しょ」

そう言いながらゆっくりと起き上がるエルフさん・・・名前をファルと言った。

「どもども、ありがと〜〜〜」

「どういたしまして。それより、なんか一瞬で倒されてたみたいだけど・・」

「実はですね・・・・」

ファルはこれまでの経緯を話してくれた。

エルフとしてエルフの村で生まれ、育った彼女は、ある日、自分に合ったいい場所はないかと村を飛び出してアデンのあちこちをさまよっていたらしい。

「へえ、じゃあ、もう20歳ぐらい? それでもここは辛いと思うけど」

23を過ぎたあたしでもここで一人で戦うことは困難だ。しかしファルの答えはもっと驚かされるものだった。

「14歳でーす」

「じゅ、じゅうよん!?」

「ですです」

14と言えば、あたしらヒューマンで言えばまだまだ話せる島でウェアウルフとでも戦っている年頃だ。本土に出てきて、ましてや捨てられた露営地などで戦える訳がない。

「・・・そりゃ無理と言うより無謀でしょ」

「むうう、マフムめー」

「あはは・・・あ、そうだ」

だとすれば、年齢的には話せる島でもちょうどいいんじゃないだろうか? あたしは思い付いた計画を話してみることにした。

「ねえ、話せる島て行ったことある?」

「ぷるぷる。無いです」

「あたしこれから話せる島まで行くんだけど、よかったら一緒にいかない?」

「行く行く、行ってみたーい」

一瞬、断られるかとも思ったけど、ファルは目を輝かせてあたしの提案に乗ってきた。

「おっけー、じゃあ、行こうか」

相手が年下、と言うこともあって、なんだかお姉さんになった気分で言葉遣いも少々砕けてしまう。しかしそんなことはお互いに何も気にしないほど一瞬にして打ち解けてしまった。そのままの勢いでパーティを組み、補助魔法をかけて走り出す。

「港村は〜〜、行ったことあります〜〜。と言いますか、さまよってて、最寄ったらそこでした」

「あはは。そうか、あちこち、行ってみたんだね」

「うんうん。それはもー、前途多難でした」

ちょっと言葉間違ってる気もするけど、まあいいや。それなりに苦労をしてきたんだろう。いや、それを楽しんでいたのかもしれない。あたしが、海や山へ繰り出すように・・・

性格的に結構似てるんだろうな。雰囲気は高子に通じるものもある。ってことはあたしと高子も似てるのか。まあ、似ているからこそ意気投合したのだろうけれど。エルや杏も、印象は違えど、根っこのところは同じなのかもしれない。もちろん、arameさんやみづほさんも。

「とーちゃーーく、です〜〜」

グルーディン港の村はすぐだった。そしてそこで今度は見知った顔に出会った。

「よー、なるる。何やってん?」

「arameさん、業務課3号さん。こんにちは〜。ちょっと島まで観光案内を」

「ん?観光?そのコ?」

「ファルでーす。よろしく〜〜」

「よろしく。ウチ、あらめ」

「業務課3号です」

「業務課・・・総務課とかもいたりする?」

「こらこら・・・このコ、露営地で行き倒れてたの。島行ったことないって、だから案内してあげようかな、って。まだ14歳なんだよ」

「ぶっ。14で露営!?」

そりゃ驚くだろう、と期待しても振りだったんだけど。二人とも見事に驚いてくれた。

「まふむめーー。今度は返り討ちにしてくれる」

あはは。本当に面白いコだなぁ。

「3号、ヒマだし、うちらも着いてくか?」

「いいね。乗った。仕入れたいものもあるし」

「そうだ、ちょうどいいや。妹連れてくる」

「あ、おれも」

「ちょっと待ってて」

そう言うとarameさんと3号さんはその場を後にする。少し待つと広場の方から誰かがこちらに向かってやってきた。

「おまたせ」

ダークエルフの女性とドワーフの女性。名前を見ると「亜羅雌」「どきんチャン」とある。どきんチャンはともかく、ダークエルフの亜羅雌がarameさんの妹で間違いなさそうだ。とすると、こっちのドワーフさんは・・・

「3号の妹、どきんチャンでーす」

・・・・ヒューマン剣士の業務課3号さん。重厚で落ち着いた雰囲気のある彼と違って、なんかライトでポップなシスター。ドワーフという種族のせいもあるのだろうか? arameさんの方はもともとぶっきらぼうなところもあったので、ダークエルフでもそんなに違和感はない。もっとも、付き合ってみれば優しいお姉さんだけど、それはダークエルフという種族そのものにも共通するものかもしれない。見た目で判断するなかれ、と。

「よーし、では話せる島に向けてしゅっぱーつ」

こっちは外見通りと言うか・・・エルフってもっとおしとやかで清純とか清楚ってイメージがあるけど。おしとやかかどうかは別にして、軽やかな動きはエルフそのものだろう。軽やかすぎる気もしないではないが、まあいいや。

さて、港まで走って桟橋へ。ちょうど、話せる島とを往復する定期船が舟付き場に停泊していた。

「船って初めてです〜〜」

桟橋でファルがはしゃぐ。と言うか、ずっとこのテンションだな。

「ん。残念ながら船には乗らないよ」

「ぇ」

「海の底、走って渡るんだけど、船、乗りたい?」

「ううっ、船も乗りたいけど、海のそこ〜〜楽しそ〜〜」

さらにテンションの上がるファルであった。arameさんと3号さん・・・・亜羅雌とどきんチャンはしょっちゅう海底を渡っているので驚きはしない。

桟橋の上で皆にキス・オブ・エヴァとウィンドウォークの魔法をかけ、「着いといで」と声をかけて海へと飛び込む。あたしたちにとっては「いつものこと」なのだが、ファルに取っては初体験。飛び込んだのはいいけど、前後がわからなくなったのか、反対側へ進もうとしている。

「そっちじゃない、こっちこっち」

「あや?あや?あやや??」

右往左往しているファルのところまで戻って、手招きする。やっと気付いてくれたのか、こっちに向かってくる。それを確認してから本来の方角へと進みはじめる。

「ぶくぶく」

「もうちょっとの辛抱だ」

「あいー」

さすがに珍しいからだろう、きょろきょろと辺りを見渡している。まあ、もっとも、海底の風景なんてさして楽しいものではないんだけど。水面の方を見上げるとそれなりに幻想的だったりする。しかし変化に富んでいるって訳でもないので、すぐに飽きるはずだ。それでも珍しさも手伝ってか、ファルの表情は驚きと歓喜にあふれていた。

「うわーー」

そして、その表情はさらに変化する。

「どわっ。何ですかー、ここわーーー」

そう、海底の異空間。

あたしも・・・と言うか、お姉ちゃんがはじめてここに来た時もこんな風だったかな。だから、気持ちはわかる。

「部分的にね、海の底にこういう空間があるのよ」

「へえええ。びっくり仰天たまげたポン」

「息もできるしね。行くよ」

「あ、ほんとだ」

ここもまあ、何もなくて殺風景なので、あんまり長居したいって場所ではないんだけど、はじめてなら逆にこの広さは物珍しさ百倍だろう。きょろきょろしているファルは少しあたしから離れてしまった。

海底空間

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「こらこら、何処へ行く」

「あうっあうーっ」

時折、そうやって方向を修正しながら話せる島へと近付いてゆく。やがて島の北端に最も近い「壁」へとたどり着く。

「よーし、すとっぷ」

「ききーーっ」

「こっちの崖に寄りかかって」

「ほえほえ、ここ、登るですか? よーーし」

「いや、さすがに登れな・・・・い?」

あたしが首を振りつつ帰還スクロールをカバンから取り出そうとしていると、ファルはするすると崖をよじ登って行った。

「登れた〜〜〜」

「マジ?!」

今度はあたしたちが驚く番だった。以前、お姉ちゃんが最初にZwolfさんとトロピに教えてもらってからずっと、壁際で帰還スクロールを使うのがセオリーだと思ってたんだけど、なんと、この崖、登れるんだ。

「ってゆーか、どうやって登ったんだ?」

「ぴょんぴょーーん、するするーーっと」

とっても分かりやすい解説をありがとう。うーーむ。しょうがない、ファルの実績があるのだから、あたしもがんばれば出来るはず。

自分の身長の三倍はあろうかと言う崖を見上げ、思い切って手をかけ、よじ登ってみた。

ぴょんぴょーーん、するするーーっ。

「の、登れた・・・・」

「やはーー」

「むむ、どうすりゃいいんだ?」

亜羅雌とどきんチャンが苦戦しているらしい。

「あ、登れた」

まず、亜羅雌がはい上がって来た。

「よっこらしょっと」

続いてどきんチャンも。

「すごいな、ここ登れるんだ」

「みたいだねえ。あたしもびっくり」

「うんうん」

などと海中でおしゃべりしているが、何か大切な事を忘れているような・・・・はっ!

「駄目、みんな、一度、崖の下に戻って」

「うひょ?」

「いいから、早く」

「うひー」

亜羅雌、どきんチャンに続き、ファルがおとなしく崖の下に降りたのを確認し、あたしも飛び降りる。

「どしたかな?」

「補助魔法かけなおす」

海中に『はい上がった』ため、息ができなくなったのだ。このまま海中に戻り、島まで歩いたとしたら、途中で魔法が切れて溺れてしまう可能性がある。ここで再度かけ直しておくべきだろうと思ったからだ。

「ってゆーかさ」

あたしが補助魔法をかけなおしていると亜羅雌が意見を述べた。

「ここから歩くと結構あるよ? ここはいつも通り帰還スク使った方がよくない?」

「そうだなー。こちから港村に行く時は歩いてもいけるかも」

どきんチャンも賛成。

ふむふむ。確かに、ここはまだ島の北端からさらに北だ。島に上陸するとなると、村の近くの砂浜あたりまで行かなければならない。島の北側は高い崖になっているため、そこから上陸することは困難だろう。さっきのようによじ登れるのかもしれないが、試してみるには少々リスクが大きすぎる。あたしも帰還スクロールに賛成だ。

かけ始めていた補助魔法は、まあ、とりあえず全員にかけておいた。

「じゃあ、帰還しよっか」

確認するのを忘れていたが、全員帰還スクロールは持っていたようだ。崖の下でならんでスクロールを紐解く。皆でならんで魔法陣を浮かび上がらせると、いつもながら壮観だ。

視界が暗転し、聞き慣れた村の雑音が耳に入ってくる。静かに目を開けるとやはり見慣れた村の光景。

走る人、歩く人、物を売る人。

でもファルには物珍しい光景だったようだ。制する間もなく、走り出すと、村のあちこちを見て回っている。まあ、制する必要もないんだけど。

「元気だなあ」

亜羅雌が目を細めて言う。確かにその通りだ。

「ちょいっと仕入れ行ってきまーす」

どきんチャンも魔法屋へと駆けて行った。ここでしか売っていない品物を買い溜めるためだろう。

あたしと亜羅雌は広場の片隅に腰を降ろしてくつろぐことにした。近くには顔なじみが何人か露店を広げている。その内の一人、涙ながらのルイ商店店主、ルイちゃんに軽く挨拶をしておく。

「ただいま〜」

「おかえり〜」

ルイちゃんも他の友達がいっぱいいるの、でそちらとの会話も忙しい。あたしの顔なじみも何人かいたので軽く挨拶を交わす。それからパーティ内の会話で亜羅雌とおしゃべりをしながらファルが戻って来るのを待った。

「うーーむ。武器とか防具はエルフ村で売ってるのと同じだなー」

「あ、こんなところに井戸発見!」

「むむ?なんだろう、これわ?」

あちこち走り回っているのだろう、ファルは逐一、見つけたものを報告してくる。

「しかし、あの崖が登れるとは、盲点だったな」

苦笑しながら亜羅雌。

「そうだね。ファルのお陰だ」

「ファルえらい?えらい?」

パーティの会話なので、当然ファルにも聞こえる。

「えらいえらい。いいこいいこ」

「ファル、いいこーー」

なごんでいると、用を済ませたどきんチャンもあたしたちのところに戻って来た。やがて、村中を駆け回っていたファルもやってきて、四人で一息つく。

「むー。あんまり広くないですねー」

すでにアデン本土をあちこち回っていたファルにとってはこの島、この村は特に小さく感じるだろう。

「まあ、小さな島だしね。外、行ってみよっか?」

「はーい」

「どっから行こうか?」

「カエル・・・・が居ると聞いたことがあります」

亜羅雌たちに聞いたつもりが、ファルが答えた。

「カエル?・・ああ、ジャイアントトードか」

「んじゃこっちだな。すぐだよ」

亜羅雌が先に立ち上がって走り出したのでそれに続く。北西の門からジャイアントトードの居る川辺までは本当にすぐだ。

「カエルだーーーーーーー」

獲物を見つけたファルはジャイアントトードの群れているところへ突っ込んで行った。まあ、14歳なら問題はないだろう。ファルが切りかかると、当然のごとくジャイアントトードたちが一斉に反撃に出る。

「うひゃーーー。気持ちわるーー」

そう言いながらも剣を振り回し、ジャイアントトードを切り捨てて行く。あたしたちの出番はない。

「カエル〜〜〜」

三匹のジャイアントトードを倒したファルは新たなカエルを求めて突進する。とりあえず、気が済むまでやらせてあげるとするか。あたしたち三人はその光景を見守った。

「はあはあ」

意外とすぐに飽きたらしい。あたしたちのところに戻って来た。

「カエル堪能しました」

びし、っと敬礼。

「うむ、御苦労。じゃあ、次、行ってみようか」

次の目的地に向けて川沿いに走る。

次。もちろん、あそこだ。話せる島を案内する上で忘れてはならない場所。話せる島の滝。姉ちゃんが一人始めて「冒険」した場所。あたしにとっても特別お気に入りの場所なのだ。知り合った人達は皆ここへ案内しているくらい。

意外なことに、みんなこの滝へはあまり来たことがないらしく、驚いてくれる。滝は見たことあるけど、上に登れるのは知らなかったって人も多い。

「うわー、きれーー!」

滝が近付き、全容が見えるところまで来るとファルが叫んだ。一目散に走り出した・・・と思ったら、手前に居たカエルを殴っている。

「かえる〜〜」

・・・通知表に落ち着きがありません、と書かれるタイプだな、こりゃ。あたしもあんまり他人のことはとやかく言えませんが。

「滝〜〜〜」

ジャイアントトードを倒したファルは今度こそ滝をめがけて走りだす。

「あーこら、そっちは・・・」

ブレーダーがいる。ファル一人では太刀打ちできないはずだ。これはやばい。

「ちょっと待て〜」

言って聞くコじゃないってのはすでに理解したので、言いながらもフォローに急ぐ。亜羅雌とどきんチャンもすぐに気付いて同様に追いかけてくれる。

案の定、近くに居たブレーダーがファルに襲いかかろうとする。そこにあたしと亜羅雌のウィンドストライクが命中すると、トドメにどきんチャンの一撃。倒れるクモにファルの剣。

「ふふふ、タライもない」

他愛も無い、と言いたいのだろうか? 自分が倒したごとく威張るファル。

苦笑・・いや、普通に微笑ましいかな。二人の頬が緩んでいる。多分、あたしも。

「さ、こっちこっち」

先導してあたしが滝の脇から崖を登ると、滝の上へとやってきた。

「ふわー」

ファルも

「へー、ここも登れたんだ」

どきんチャンも

「何度来てもいいな、ここは」

亜羅雌も

皆、気に入ってくれたようだ。あたしのもの、と言う訳ではないが、なんだか自慢できてうれしい。とっておきの場所。お気に入りの場所。あたしの・・・お姉ちゃんとあたしの、故郷の中の故郷。

しかしさすがに、一人か二人でのんびりぼーーっとするのには良いんだけど、人数が揃うと手持ち無沙汰になってしまう。場所そのものがひとつの話題であって、ここで何かする、できる、と言う訳ではないから。できることと言えば、ぼーーっとして他愛もないおしゃべりをすることぐらいだ。

「ファル、あんまり前に・・・」

しまった。油断した。彼女の性格をだいぶ把握してきたと思ったんだけど、風景になごんでしまって、先手を打ちそびれてしまった。言い終わる前にファルは滝壺に飛び込んでいた。

「あちゃ・・・」

「しょうがないわね・・・まったく」

残った三人にキス・オブ・エヴァの魔法をかけてから滝壺へ。

「きゃっきゃ」

またも滝壺で右往左往しているファル。方角がわからないというか、どっちに進んでいいのか分からないのだろう。流れ落ちる滝の水圧で進めない場所もある。

「こっちこっち」

海の時と同じように近くまで行って手招きする。彼女にはキス・オブ・エヴァの魔法がかかっていないので、急がないと息と体力がもたない。水中に入ってしまってからだと魔法をかけても意味はないのだ。ウィンドウォークはさっきかけたのがまだ残っているけど、とりあえずかけなおしておこう。

「亜羅雌とどきんチャンの方に行って」

二人が先導して上陸ポイントへ向かう。あたしはファルが明後日の方角へ行かないよう、後からフォローする。

「もうちょい右」

後ろからあたし。

「こっちこっち」

前から亜羅雌。

「あわわ、ぶくぶくぶく」

息が切れ、体力が奪われて行くファルに後から緊急回復魔法。年の差のお陰もあって、一発でかなり回復できるので、とりあえずは大きな問題はないだろう。この調子で進んでくれれば・・・

「うわ、そっちじゃない、左、左。右に行くんじゃないっ」

まあ、なんとなく分って来たけどさ。

「なんかこっち登れそう。近いし、こっちー」

「だからそっちは・・・」

反対側に向かって行くファル。

「あ、登れた」

いや、登れるのは登れるんだけどさ・・・

「うひゃーー、出たなっ、お化けグモっっ!」

・・・・・・・

「はぁはぁ」

「ふへー」

右側はブレーダやらオーク隊長、それにウェアウルフチーフと怪物たちがうようよいる。だから遠回りでも左手の安全な方にと誘導しようとしたんだけど・・・まあ、結果的には全員無事だったし、よしとするか。まったく、本当に、びっくり箱みたいなコだ。

悪意がある訳ではない。海底の崖を登ったりしたときもそうだけど、純粋な好奇心と挑戦する意欲。ただそれだけなんだろう。あたしたちは、ある程度世界の「理(ことわり)」を解したつもりで「それは無理だ」「できる筈が無い」と決めてかかっている部分も多い。慎重かどうか、って差はあるにしてもだけど、ファルの行動とその行動の元になる純粋さはかつての自分と重なる部分もある。ファルを見守る亜羅雌やどきんチャンの表情を見ても、ふたりが同じ思いを抱いているのは間違いないだろう。

「うひゃー、クモだらけですね〜」

滝の下で一息着いたあたしたちは、島の北側、クモが大量に生息している方角へと進んだ。

森と言わず、海岸と言わず、道にさえクモが溢れていて、年齢によっては通行するのも困難な場所だ。幸い、今は転職を済ませたあたし、それに転職直前の亜羅雌とどきんチャンが居る。ファルが勝手に動き回りさえしなければ・・・・・

「って、ほら、勝手に行かないのっ!!」

なんとか三人でフォローしつつ、道を進む。クモたちをなぎ倒しながら走って行くと、小屋が見えて来た。

「なんかいます」

近付いてそれが何か判別できる前にファルを制さなければならない。アレは洒落では済まされない。ファルの性格からして、アレに手を出さない筈が無い。

「絶対に手、出しちゃだめよ」

「なんかいやな予感がする・・・」

亜羅雌がボソっと言う。そして予感は当たる。

「ネコちゃんだ〜〜〜〜!!」

召喚士の住む小屋の前、召喚士どのとその召喚獣・・・キャット・ザ・キャットである。

「待たんかこら〜〜〜〜!!」

言うも虚しく突撃一途のファル。

これまでとは異なり、本当に洒落にならない状況。ファルにはそれが分っているのかいないのか。彼女にとってみればカエルも猫も皆同じ。珍しい生き物に変わりはないのだ。

「しーらないっと」

さすがの亜羅雌もこればっかりは触らぬ神に祟りなしのご様子。どきんチャンも一応、かかって来いのポーズは取っているものの、状況を見守っている。

あたしは、まあ・・・・保護者責任ってやつだよなぁ。

はぁ。

勢いで猫ちゃんに話しかけたファルはもちろん「にゃにモンだお前は?」と攻撃される。なんとか持ちこたえたファルに緊急回復魔法を唱える。ファルもさすがにヤバイと悟ったのか、逃げようとする。猫がネコパンチを繰り出す。あたしがファルを回復する。何度かそれを繰り返すと、猫ちゃんはあたしに目を付けた。

あたしでも殴られるとさすがに痛いだけでは済まされない。今度は自分に回復魔法。するとファルが止せばいいのに猫ちゃんに反撃する。

「きゃはは〜〜」

ぽかぽか。

きゃはは〜〜、ぽかぽか、じゃないでしょっ! と、突っ込む余裕すらない。すると今度はまた猫ちゃんが殴り掛かっているファルに狙いを戻した。

「うひゃひゃ〜〜〜」

まったくもおお。

手出ししてもどうにもならんと悟った亜羅雌とどきんチャンが座っている周りをぐるぐる。いつぞやの杏と蜂を思い出す。しかも、あの時同様、いずれはマナが尽きて・・・

「あ?」

「お?」

その前に猫ちゃんが透き通るように消滅した。

きょろきょろ、と辺りを見渡してみるがどこにもいない。ふと召喚士と目があった。彼はほほ笑んでいた。彼が召喚を解除したのか、それとも召喚時間が切れたのかは謎だが、とりあえずは全員無事で済んだ。

「ネコちゃん堪能しましたっ!」

びし!っと敬礼。

はああ、疲れるうううう。

けど。

楽しい。

しかし、これはまだほんの序章に過ぎなかった。

「ねえねえ、みんな、エルフの国って、行ったことある?」

ファルはあたしたちにそう問いかけた。

首を横に振る面々。あたしももちろん行ったことはない。行ったことがあるのはダークエルフの国だけだ。そういえば他の種族の国にはまだ行ったことがなかったな。

「じゃあさ、行ってみない? あたし、案内するよ」

また新たな冒険の旅が始まる予感。はてさて、今度はどうなりますやら。

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