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朝、ブレーキ音と軽い衝撃で目が覚めた。時計を見ると5:30、時刻表では吉林の一つ前の停車駅「口前」駅に停車する時間である。やがてホイッスルが鳴り、列車がゆっくり動き出す。前から3両目なので、ホームの駅名表示が見ることができずに構内を発車してしまった。何駅だったのかわからないままだった。しかし、順調に走っているところを見るとおそらく定刻通りに運転しているのだろう。服務員が中国語で「吉林に近づいたので起きて下さい」的なことを言って客を起こして回っていた。一生君も起きた。定刻より3分遅れの6:05、静かに吉林駅に到着。朝の駅前は太極拳に勤しむ人々で活気にあふれていた。
吉林駅のホーム上で収録。朝からにぎやかである。(28.8k/Mono)


▲吉林駅ホーム ▲荷物車用のトラックが待機していた


▲ホームはとにかく広い。 ▲早朝の吉林駅前
荷物をもったまま広い駅前を1周しながら公衆電話を探す。一生君は嫁である長青(ちょうせい)さんの実家に居候しているので、駅に着いたことを知らせるというわけだ。朝日が差し込むと急に暑くなってきた。内陸の都市なので夜は冷え込み、昼は暑くなるという。
タクシーで20分ほど走る。町の中は教科書通り自転車、自転車、自転車である。車もけっこう多い。日本の大手メーカーの軽自動車が紅く塗られてタクシーになっている。中国の車はよく飛ばす。舗装状態の悪い一般道でも70〜80km/hは平気で出す。さらに追い越しをかける時は二重追い越し当たり前の世界である。道路を横断する歩行者がいても日本のように「十分な減速」はしない。歩行者は歩行者の責任で道路を渡らなければいけないのだそうだ。ちなみに右側通行、左ハンドルなので、助手席に座るとかなり怖い。
やがて旧日本軍が架けたという吉林大橋にさしかかる。松花江という川を渡ると「吉林高新技術産業開発区」である。読んで字のごとく、この区域は開発ラッシュが進んでいた。
建設中のビルがいくつも立ち並ぶなか、団地のような建物群が見えてきた。この団地の7階が長青さんの実家である。1階のオートロックを開けてもらうと、階段が続いている。エレベータはなく、7階まで階段というわけである。中層階がまだ内装工事中のため、階段がほこりっぽい。登っているとよくつまづく。よく見ると一段一段の高さが明らかに違っており、なるほどこれで足が引っ掛かっていることがわかった。
ようやく7階にたどりつくと、長青さんの家族が笑顔でお迎えしてくれた。靴を脱ぎ、スリッパに履き替えておじゃまする。家に入るとこれまでの階段の雰囲気とうって変わって美しい。床がフローリングで鏡のように磨かれており、室内は明るく快適である。一通りの挨拶が済んでしばし休憩。
台所では家族で餃子を包む作業が進められていた。特製の水餃子である。中国の水餃子はスープの中に浮かんでいるのではなく、ゆでる感覚に近い。お湯から引き上げて皿に盛りつける。食べる時は醤油がメインである。ポン酢はなく、酢といえば独特の味をした黒酢があるが、餃子にはあまりつけないという。朝一番の餃子は最初は抵抗があるかもしれないが、食べてみるとけっこういける。脂っこさはなく、中のダシ汁が美味い。具のバリエーションも、肉や野菜が豊富で楽しい。赤唐辛子入りはさすがに辛かったが。

午後から「松花湖」へ向かう。さっきの松花江の上流にある巨大なダム湖で吉林市の水がめである。このダムも旧日本軍が建設したもので、当時多くの中国人が重労働を強いられ、多数の犠牲者も出たといういわく付きのダムである。ダムには人民軍の兵が立っており、ここが重要施設であることを物語っていた。
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