中国鉄路の旅


 第8日目:8月11日(金) 哈爾浜〜北京

 午前中に長青さんが身分証明書を発行してもらっている間、別行動の5人は「黒竜江省民族博物館」へ向かう。途中のロータリーで自動車事故を目撃する。ロータリー内を走行していたタクシーにマイクロバスが接触したらしいが、見るとたいしたことはなく、こすった程度のようだった。中国ではバンパーの修理くらいなら10元(130円)程度できるという。それよりも驚いたのは周囲の渋滞だった。ただでさえ交通量の多い交差点で事故が起きたためか、ひしめき合う車、鳴り響くクラクション。事故を起こした方はたまらないが、日本では漫画の世界でしか見ることのできない象徴的な「渋滞」は、なんとも新鮮に映った。
 黒竜江省民族博物館では現地の伝統的な展示品の他に、満州時代の記憶や現物を後世まで伝えるスペースが用意されていた。やはり日本の爪痕は大きいようだ。



 (上) 吉林から哈爾浜に流れる「松花江」を横断する「浜州鉄路橋」。
 (下左)哈爾浜市内のトロリーバス。
 (下右)「防洪紀念塔」松花江の大洪水から哈爾浜市民を守るために人民解放軍が活躍したことを讚える記念碑。

 

 正午頃に長青さんが戻ってきたので、すぐに航空券を購入。哈爾浜空港を14:40に出発する便を確保することができた。出発前に腹ごしらえをと全員でもう一度、今度はトロリーバスに乗って「中央大街」に繰り出す。日本では数少なくなってしまったトロリーバスだが、中国ではあちこちで見かける。ガイドに載っている餃子の老舗「老都一処飯店」へ入るが、あまりの美味さに驚く。さまざまな香辛料の入った特製のタレにつけて食べるのだが、餃子の種類が豊富なのに加え、中の具もたっぷりと詰まっている。なによりタレが無くても中の出汁だけで十分美味い。中国の餃子は基本的に「水餃子」だが、日本と違うのは、スープにつかっているのではなく、引き上げた状態で皿に盛られている。スープは餃子の中に入っているのだ。冷たいハルピンビールを昼間からあおって大満足の昼食だった。

 

 ホテルでチャーターしたタクシーで空港へ向かう。空港までは40分ほどかかるが、広大な平野を延々と走る。こんな遠くに空港をつくらずに、もっと近くであればアクセスも便利なのにと思う。空港はビルがまだ新しく、瀋陽空港よりもきれいだった。長青さんは初めて飛行機に搭乗するらしく、興奮気味である。
 乗ってしまうと北京へは1時間半。あっという間である。吉林から哈爾浜まで6時間かかったのが嘘のように思えてくる。

 

 空港で市内のホテルを確保し、タクシーに乗る。タクシー乗り場では白タクやメーターを違法改造したタクシーなどがないか、公安が徹底的に車内を検査している姿が印象的だった。空港を出るとそのまま都心直結の高速道路に乗る。法定速度は110kmで、片側3車線の広々とした道路は快適そのものだった。
 市内に入るとトロリーバスの架線があちこちに張り巡らされ、ひっきりなしにバスが往来する。架線のないところでもトロリーポールを下げてバッテリーで走っていた。排ガスもなく、音も静かだ。
 その晩は広さの感覚がマヒしてしまいそうなくらい巨大なショッピングセンター「新東安市場」へ買い物をする。22時で閉店なのだが、「閉店のベル」が鳴る(本当にジリリリと鳴っていた)と店員たちが一斉にどこか1ヶ所を目指すかのように同じ方向を向いて走りだし、残されたのは我々と、戸締まりをしながら早く出ていけと言わんばかりにこちらを見ている警備員の姿だけ。あの光景はいまだに忘れられない。



            高速道路の料金所も凝った造りになっている。



Back / INDEX / Next