
今夜は北京から瀋陽まで、夜行列車で移動するため、日中行動しやすいように荷物を「国営寄存」に預ける。
今日は北京の地下鉄に乗車する機会が持てた。北京駅の駅舎と地下鉄の乗り場とはつながっておらず、広場を挟んで反対側に地下鉄の入口があった。

切符売場(左)と改札口(右)。
地下鉄の切符。
窓口で切符(全線一律3元;約39円)を買い、改札口へ。自動化はされておらず、改札員は一人だったが、日本のように利用客が多いわけではなく、一人で十分のように思えた。階段を降りるとすぐにホーム。架線は第三軌条を使用しており、日本と違い、島式ホームの内側に敷かれている。転落すると危険である。頻繁に運転されており、5分も待つとすぐに列車が入ってくる。時刻表らしきものは見当たらなかった。
ホーム上を白い割烹着のような服を着た女性の駅員が等間隔でパイプ椅子に座っている。電車がホームに近づくとホームにアナウンスが流れ、やがて青白いボディに青いラインの入った車両が姿をあらわす。駅員が腰を上げ、車両から1mほどの所で車両の方を向いて直立不動になる。ドアが開き、客の乗り降りが終わると小さなチャイムと共にドアが閉まる。駅員は電車が発車すると進行方向へ左向け左をし、電車を見送る・・・また椅子に座る。こうした風景が繰り返される。
構内は日本の雰囲気とよく似ている。
車内ではアナウンスが中国語と英語で行われていた。中国語ではバスの乗り換え案内もされているようだ。
北京駅から「環城線」で一駅、「建国門」駅へ。ここで赤い色の「復八線」に乗り換える。乗り換えはホームの真ん中の階段を降りるとすぐだった。これは便利である。「王府井(ワンフージン)」駅で下車し、巨大な総合ショッピングセンター「新東安市場」へ立ち寄った後、再び地下鉄で王府井駅から二つとなりの「天安門西」駅まで乗車(この間には「天安門東」駅がある)。朝行ってきたばかりだが、端から端まで1駅分もある天安門広場の広さをあらためて実感した。
地下鉄の音、車内放送(その1)(28.8k/Mono)
地下鉄の音、車内放送(その2)(28.8k/Mono)
天安門広場
その後、北京最大の書店「北京図書大厦」へ向かい、鉄道関係の雑誌や書籍がないかを探したが、「鉄路」のコーナーを見ると掘削技術・架橋技術・電気・軌道・車輌に関する専門書が並び、そのほとんどが漢字と数式で構成されているという、完全に技術一色の世界のようで、日本で発売されているようなファン向けの雑誌や写真集は置いていなかった。国が発行している永久保存版のような本が数冊あったが、月刊誌などがあるような次元ではなかったし、せっかくなので記念切符の図録と、日本で買えば倍以上すると思われる装丁のきれいな本を買った。450元(約5850円)。中国人の平均月収クラスの価格なだけに、これが欲しいと店員に告げると「えっ、本当にこれを買われるんですか?」と当惑していた。

北京駅。
生まれて初めての個室寝台である。実は日本でもまだ個室寝台に乗ったことがない飯嶋は、とても興奮していた。とはいえ4人個室に3人の予約である。中国の鉄道では4人個室には定員通りの4人入れる決まりらしく、あと一人は誰が入るかわからない。2対2ならまだしも、3対1だから、この人は少しかわいそうである。
後で判ったのだが、駅によっては軟臥・軟席には専用の待合室があり、行列の中を並んだりせずに済むそうである。次回乗車する機会があれば利用してみたいと思う。
軟臥車の通路。
ホームでは瀋陽と同じく各号車毎に服務員が待機しており、個室番号を確認して切符と引き換えに部屋のカードを渡している。我々の列車は22:15発 53次列車 12号車17号(下段)・18号(上段)・19号(下段)で、運賃は下段が286元(約3700円)、上段が275元(約3570円)で、日本と同じく居住性の良い下段の方が高い料金設定になっている。とはいえ、北京−瀋陽北間744kmを9時間13分、(表定速度約80km/h)で結んでいる寝台特急でこの値段は安い。日本ならば運賃だけで10190円である。これにA寝台料金10500円、特急料金3150円が加算され、23840円という金額に跳ね上がる。
軟臥の室内。2段ベッドが向かい合わせになっている。(座っているのは長青さん)
乗車するとしっかりとクーラーが効いており、車内の密閉性も高い。部屋にはスライド式の扉が付き、内側から鍵がかけられるので、安全である。放送の音量調整ボタンや、服務員のコールボタンもついていた。また、発車の瞬間がまったく気づかなかったのは特筆すべき点である。台車も特殊な緩衝機構を取り入れているのか、あるいは品質の良い空気ばねを採用しているのか、保線の良さもあると思うが、高速走行中の振動はほとんど感じられない。かすかなジョイント音とわずかな揺れ、そして流れる北京の夜景だけが走っていることを感じさせるという、まさ「軟臥」に相応しい極上の空間だった。サービスも良く、新聞、お湯のポットが常備され、ミネラルウォーターとヨーグルトドリンクが提供される。乗車記念のお菓子も人数分配られたが、なぜかそのケースには「小田急ロマンスカー(10000系HiSE)」の写真が・・・。
読書灯の明かりのもと、一生君と積もった話に花が咲いた。
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