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移住生活の長所と短所 〜 あなたのプランはここまで考えていますか? 〜
この章のポイント 北海道への移住には、長所もありますが、経験しないと考えにくい課題もあります。危機管理や長期展望の面が甘かった面もないわけではありません。
ここでは都会の生活と地方の生活を比較し、問題点を整理します。そんな課題を乗り越えて北海道で暮らそうという方を応援します。
風景
1999年11月16日公開
2006年 5月30日更新
目次  課題別の整理
   物価 医療 帰省 労働条件 教育 仕事 キャリアアップ 札幌集中
 課題を乗り越えて移住する意思があれば

 ここまでたどりついたあなたは、北海道への移住、あるいは地域暮らしに少しでも関心のある方でしょうか。
 私が北海道の都市から離れた地域に移住を実現し実際に生活する中で、もちろんいい部分もたくさんありました。それについては前項「北海道移住の評価」で述べてきました。しかしその一方で問題点も少なからずあります。
 その問題点とは、移住を考える上でここまで正直考えなかったと私が感じている部分でもあります。また前項で「北海道暮らしに満足」としましたが、それは日々の生活の話。人生には危機管理も必要ですし長期展望も必要です。実際の生活の中でそれも考えると問題点がいくつか挙がります。
 ここではその問題点を挙げますので参考にしてください。
 この問題を考える上でひとつだけ大切なポイントを提示したいと思います。「あなたの人生はあなただけのためにあるわけではない」ということです。現在・未来の家族や親戚も限られた人生を限られた資源を使って生きているのです。理屈やきれいごとで済まないこともあるのです。

課題別の整理
課 題 本州の大都市部(東京) 北海道の都市部(札幌) 北海道の地方部(地方都市・郡部)
自然環境 △人工的な要素が多い
×自然まで距離・混雑
○ほどよく豊かな自然
△自然までやや距離
○自然が豊か
○本格的自然が間近に
人混み ×雑踏・通勤ラッシュ・渋滞。遠距離通勤
△小さいが雑踏・通勤ラッシュ・渋滞はある。 ○雑踏・ラッシュ・渋滞はない。通勤時間短い
物価 ×一般に高いと言われている
○工夫すれば激安あり
×高いところもある
○工夫すれば安いのもある
○地場品は安く良いものがある
×地場品以外は高いものがある
医療問題 ○高度医療機関が身近にある
○医者には不自由しない
△高度医療機関も一部にある
△医者にはそこそこ不自由しない
×高度医療機関は遠い
×日常の医療も非常に限られる
教育環境 ○学校は近く数多い。
○高校大学の選択肢は豊富
○学校は近く数多い。
△高校の選択肢はほどほど
×大学は地方よりは多いが東京への流出も多い
△学校は数が限られ一部遠距離も
×高校の選択肢が少ない
×大学は極めて少なく札幌・東京への流出が大多数
労働条件 ○賃金は高い。休暇や福利も恵まれている。 △賃金・休暇・福利等東京より悪いが地方よりはまし ×賃金は低く、休暇や福利も条件が悪い
帰省問題 △東京発地方は逆より安い
×帰省ラッシュ有
×地方よりましだが費用高い
△帰省ラッシュと逆方向
×費用高く便も限りあり
△帰省ラッシュと逆方向
先端文化 ○文化的に最先端
△道内ではましだが地方は地方。 ×札幌とは格差がある

●挙げられる問題点
 ・物価は安くはない。
 ・医療問題
 ・帰省は容易でない。
 ・労働条件は必ずしも良くない
 ・高等教育環境が不備
 ・札幌への一極集中

物価が高い!?
 物価が高いです。地物の農作物や魚介類についてはけっこう割安なところがあり、またよい食材が手に入りますが、それ以外の物資はスーパーをみている限り若干割高に感じます。スーパーの物価についてはどういう系列の店舗があるかに依存する面があるので、地域性というよりはたまたま巡り合わせが悪いだけなのかもしれません。道東では帯広近辺が物価が比較的安いみたいな話を聞いたことがあります。それ以東は割と高いみたいです。釧路もうちの近辺より安いですが、なんてことはありません。ただ時々思わぬところでゲリラ的に価格破壊されていることがあります。
 これを数字でみると、北海道は全国平均と比べるとエンゲル係数が低く、平均消費性向が高くなっています。これは食糧は安いものの物価はトータルとして高いもしくは消費支出が多いことを示しています。さらに札幌市は北海道平均と比べてエンゲル係数が低くなっています。これは札幌市など都市部の方が生活水準が良いことを示します。
 個別の商品でみても都市部より1割以上高いのはざらに見かけます。ガソリン単価も10円以上高くなっています。私も生鮮食料品以外の部分は都市部での買い物に依存するケースが多々あります。それに必要なガソリン代もバカにならないのですが。

危機管理1・医療問題
 都会に住んでいる人は救急車は5分で来るものと思っている人が多いと思いますが、地方、特に北海道のような広大な地域では30分以上救急車の来ない地域もざらです。市街地を離れると番地を言っても救急車はまずたどり着けませんので余計に時間がかかります。
 医療機関も町立病院ですら科の数の少ないものがほとんどで、少しややこしい病気だとすぐ大都市へ送られます。大都市へつながる主要道路は実に頻繁に救急車が往来しています。搬送時間も2時間以上かかるケースもざらで、このために地方では失われなくてもいい命が失われているのが実情です。
 本当の田舎暮らしにはこのような危険が伴います。あなたやあなたの家族の生命が犠牲になることもあるかもしれません。

危機管理2・帰省問題
 このページにたどりつくのは道外出身者の方が多いと思いますが、飛行機代高いです。航空運賃の価格破壊なんていってますが一部の幹線の話。地方路線は割引廃止、運賃のつりあげ、便の削減が続いています。高いを越えて暴利の域に達しています。
 その結果、たとえば東京への運賃ですが札幌発着と地方空港発着で運賃に2倍近い開きがあります。東京以外の地域の出身者で直行便がない場合、札幌発着の3倍近い運賃となるケースもあります。私の事例で試算すると緊急帰省1人で10万、これが4人家族なら1回40万です。札幌で格安券買えば4人で20万、冗談じゃありません。
 時間的な問題もあります。道内出身者でも地方に住めば帰省が1日仕事となるケースもあります。道外の場合いくら飛行機で2〜3時間とは言え便数や前後の時間を考えると明らかに1日仕事となります。行って用事して帰ってで最低でも3日はかかります。仕事によってはこんなに休めないでしょう。
 これはおいそれと帰省できないばかりか家族親戚に不幸があっても帰省なんかできないことを示しています。職場では道内出身者からも「親の死に目には逢えないだろう」なんて声も聞こえています。そんなものに対する助成制度なんかもちろんあるはずもありません。

地方の労働条件
 公務員の場合はまだましですが、地元企業の場合、都市部より賃金が低いのが現状です。なおかつ労働時間も長く、週休二日もまだ充分浸透していません。札幌近郊はまだしもそれ以外の地方ではこの傾向は極めて顕著です。
 移住する前には所得が減ることは頭でわかっていても実際に減ってみると意外とダメージが大きいものです。それに今の北海道では一般に札幌から遠くなるほど生活費用が高くなるのが現状で、よって同じ給料の場合でも札幌から遠いほど生活水準も低くなります。それは生活水準に比較して賃金が切り下げられていることを示します。ましてやそれより賃金が低いのならなおのことダメージは大きいです。
 また休みが少ないということは、旅行を通じて移住を決めるほどにまで感じてきた北海道の魅力に触れる機会が減ってしまう可能性もあります。本当に地方に住むとその少ない休みすら買い物や情報収集など大都市でなら平日に充分こなせたであろう作業に使うこととなり、あなたが北海道の魅力に触れる機会はさらに減ってしまいます。その結果移住したはいいが何のために移住したのかという話になりかねません。
 移住する前は北海道の空気を吸ってるだけで移住の意義があるだろうとそこまで考えていたとしても住んでしまえばそんなものは当たり前になります。そうした中でそういう不満が起きる可能性も考えておく必要はあるでしょう。
 私の場合は幸い所得の減少もわずかで休みも取れますが、それでも都市部からの距離による所得の目減りや用事に休みを取られることに移住の意義を思い返してしまいます。

教育問題
 私などはまだまだ子どもの教育環境を考えるのには早いのですが、それでも仕事柄思うことはいろいろあります。もちろん地方の教育にもいい面はありますが、必ずしも大都市の人間がイメージしているような素敵なことばかりではないです。自分の子どもをこの教育に委ねていいものか思うことも少なくないです。詳細は別途掲載しますのでそちらを参照してください。

   → 別掲「地方の教育事情」「地域の学校を考える」を参照して下さい。

仕事がない!
 地方では恒常的に職は少ないです。移住を希望する人を一番悩ませる問題はそれです。仮にあなたの職が幸いにして見つかったとして家族やその子どもはどうでしょうか? あなたの仕事だけで家族全員満足な生活ができればまだいいでしょうが、そういう特殊な人は非常に限られると思います。
 職の選択肢も非常に少ないです。その結果、子どもはあなたが移住で出てきた都市部へ戻ることになるかもしれません。地方から都市部へ就職するには都市部に居続けた場合よりずっと苦労します。
 その結果、軍隊に勤める羽目になる子どもも地方では少なからずいます。そういう子どもたちを見ているとなんかとても切なく感じますね。

キャリアアップ
 仕事があったとして、専門知識で生計をたてる人には特に深刻な問題だと思います。専門性の高い情報は地方ではなかなか手に入りません。書籍も十分なものはなかなか出回りません。つまり大都市へ出る機会が少ない限りあなたの専門性・キャリアの成長はそこで止まることになります。情報収集には大変苦労します。
 最近は無知無策な政治のせいでITなるものが過当評価され、さもITで何でもできるような口ぶりでものを言う人がいますが、まだ日本の地方の段階ではできることは知れています。
 ネット環境では東京あたりでは光接続が当然でしょうが、北海道の地方ではようやく市街地でADSLが使える程度です。市町村合併で中心街の看板がはずれた集落にはそんなものすらなかなか来なくなるのが現状です。
 ITを過信して地方に来るとえらい目にあいますので注意しましょう。

札幌への機能集中
 善し悪しはともかくとして、北海道経済は札幌中心型です。物資や情報、仕事などあらゆるものは札幌に集まります。そのことは裏返すと次のような問題になります。

  • 札幌以外では満足な物資は得られません。
    趣味にこだわりのある人は特に注意すべきと言えます。
  • テレビなどマスコミもすべて札幌中心です。
    流れる情報は札幌中心です。地方では生活との乖離が激しいです。
  • 書籍その他の情報も札幌中心です。
    札幌以外では情報量・質ともに低いです。書店がない町もあるとか。
  • 職業の選択も札幌が一番自由です。
    自分の仕事だけでなく家族の仕事も考える必要があるのでは?
  • 大学・専門学校など高度教育機関はほとんど札幌です。
    それ以外の地域から子どもが進学したがれば必然的に二重生活、三重生活が発生します。
 私の場合はどうかというと・・・
 趣味的な物品はまず札幌でないと手に入らないか、札幌の方が値段がずっと安く品物の選択肢も多いので札幌で買うことが多いです。私の領域ではパソコン用品、家電、写真用品、文房具などがそれにあたります。書籍も札幌に出たときに欲しいものがみつかることが多くあります。
 そんなわけで年に何回かは札幌に行くはめになります。私の場合は旅行の途中で立ち寄るようにしていますが、限られた現地滞在時間のほとんどが買い物・情報収集にとられ非常にタイトな日程となります。
 ちなみに最初に住んだ所からは、札幌までは車で片道8時間かかりました。車&列車でも7時間かかります。飛行機でも搭乗時間約1時間・前後を入れると3時間弱かかりましたし、だいいち高くて手も出ません。


課題を乗り越えて移住する意思があれば
 ここまでいろいろな問題点を挙げてきました。しかし別に北海道に住むなと言うわけではありません。北海道は住む土地としては魅力も多くあるのも事実です。
 これらの課題を乗り越えてなお北海道に住もうとする方をこのページでは応援します。私もそのひとりとして今後も取り組みをしていきたいと思います。
 そんな私の取り組みを「移住者から定住者へ」と題してご紹介したいと思います。まだまだその取り組みははじまったばかりですし、成果と呼べるものが出るには相当の年数を要するでしょう。随時ご紹介していきたいと思いますので、興味のある方はご覧になって参考にしていただければと思います。

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