三太の発達日記

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2004年5月17日(月)  4才10ヶ月     診断前夜

三太の言語発達日記も、始めてまもなく更新が滞り、なんと8ヶ月ぶりです。これまでの出来事を簡単にまとめてみました。

◆きっかけ
昨年12月の初めに、三太が風邪を引き病院へ行きました。その時の担当が長介の主治医のE先生だったので、三太が3歳児検診で発達の遅れを指摘されたと相談したところ、心理相談外来の予約を勧められました。
心理相談外来は、以前、1才5ヶ月の時に歩行が遅かったことで発達テストを受けるため受診したことがあります。その時は、全体的に5ヶ月程度の遅れということで、特に発達障害を疑われることもなかったのですが、今、当時の日記を読み返すと「こだわりが強い」とか書かれていて、当時から十分素養はあったんだなぁと思います。

◆心理相談外来への通院
心理相談外来の担当はY先生というちょっと年配の女性の臨床心理士の先生で、とてもおっとりした感じの方です。

さっそく発達テストをすることに...。しかし、三太はマイペースで人の言うことを聞かないので、一度に全部のテストはできません。それで、少しずつ進めましょうということになりました。なので、テストというよりは、テストの問題を教材に弱い部分の訓練をするという感じでした。
この頃の三太は、概念が理解できていない言葉がたくさんあることが発覚して、見ている私も「そうだったんだ〜」と思うところが多かったです。例えば、パズルのピースのような三角形が2つあって見本を見せられ「これと同じように並べて下さい」という問題が三太はできませんでした。見ているとどうやら「同じ」の意味がわかっていないようなのです。なので、自分の好きな形に並べてしまいます。
ここでは、三太の興味や集中力を見て、遊ばせながら合間に課題を少しやるという感じなので、2〜3週間に1回の通院で、テストが一通り終わるのに3ヶ月くらいかかりました。

◆トイレの自立
病院に通い始めた頃、三太はようやくオムツがはずれました。4才5ヶ月です。
それまで、おしっこはトイレでできたのですが、ウンチがどうしてもできず紙オムツにしていました。普段はパンツなのですが、ウンチをしたくなると自分でオムツに履き替え部屋の隅に行ってウンチします。何度もトイレに誘導しようとしましたが、どうしてもできませんでした。
そこで、オムツを全部隠してしまうという強行手段に出ました。すると、三太は我慢してしまい、もともと3日に1回くらいしか出なかったのですが6日も出さなかったのです。さすがに心配になった頃「オムツ〜」と騒ぐ三太に「じゃあ、探して持っておいで」と言うと、お出かけリュックから見つけ出してきてしまい、この時はオムツに出たのでした。
さらに6日後、同じ状況で今度はオムツがありません。さすがに我慢できずにしゃがみこんだ三太を抱き上げトイレへ座らせたところ、ようやくトイレへウンチに成功したのでした。大袈裟に褒めまくったのは言うまでもありません。
ところで、驚いたことに、三太はそれまで「トイレでウンチができたら○○してあげる」という交換条件を全部覚えていました。ウンチが出来た時の第一声はゲームソフトの名前であり、その次は「チョコ!」でした。
その後、何度かはトイレでウンチも自分からは行けず大騒ぎでしたが、だんだん慣れてきて今では出たあとでお尻を拭いてもらうために大人を呼ぶだけになっています。

◆会話の進歩
トイレができるようになった頃から、病院に通っていることもあるのか、三太は急にいろいろわかるようになって、それまではほとんど成立しなかった会話もかなりできるようになってきました。
「今日、保育園で何したの?」
という質問にも、
「○○ちゃんが、△△して、せんせいにおこられた」
なんてことも言うようになりました。

◆診断のための検査
病院で一通りの検査項目が終わりました。Y先生の話では、三太は運動と言語は高いが社会性が低いということでした。言語が高いと言っても通常は、【会話・伝達】→【文字言語】と発達するところが、三太は逆で会話はできないのに字の読み書きはできます。それで検査数値は高くなるのですが言語能力が高いわけではありません。
それで、Y先生から一度きちんとした検査を受けてどのような発達障害なのか診断してもらった方が、今後の方針をたてるためにもいいのではないか、という話がありました。そこで、LD児の療育等を行っているA研究所へ相談の予約を取り、Y先生の紹介状を持って行って来ました。それが、先週の木曜日(5月13日)のことです。

◆ハイパーレクシア
三太にはどうやら発達障害があるらしいとわかってから、インターネットでいろいろ調べているうちに、この「ハイパーレクシア」という言葉に出会いました。ハイパーレクシアと思われるお子さんのことを紹介したサイトに書かれた発達の様子が、見事に三太と同じなのです。そして、このハイパーレクシアは自閉症の子に多いということも...。

◆診断前夜
A研究所では、三太は1時間余りの検査を一人で受けました。なので、検査の様子は私にはわかりません。でも、がんばって最後までできたということなので、きっと診断もしていただけるのでしょう。
待っている間、お絵描きセットを用意してもらった三太は、クーピーを蓋の裏にかかれている色の順番にしまい始め、むらさき色がないことが不満で、先生に検査が終わるまでに探しておいてもらう約束をして検査へ出かけて行きました。そして、戻ってくるなり「あ、むらさき」と、全色そろったクーピーのケースを見て満足してました。
検査の結果は、今週出ます。

2004年5月20日(木)  4才10ヶ月     診断...高機能自閉症

A研究所での検査の結果を聞いて来ました。
ここは、療育施設で医療機関ではなく、医師はいないので「診断はできません」と言われます。ちなみに「判断」と言うそうです。しかし、発達の専門家が専門的な検査をして行う「判断」ですから、「診断」と同じ重みがあると受け止めています。

検査はITPA(言語学習能力診断検査)を行ったということで、その結果を説明してもらいました。
三太は実年齢4才10ヶ月に対し、言語学習年齢4才2ヶ月。この点に関しては、発達個人差の範囲だそうです。
検査項目は10項目に分かれ、三太の平均値を基準にばらつきを見ます。点数ではわかりにくいので、年齢相当で見ると、平均が4才2ヶ月なので3才5ヶ月〜5才10ヶ月は許容範囲。ここから外れると特異な偏りと判断します。
三太は、概ね許容範囲内でデコボコしている感じですが、「言葉の表現」が2才5ヶ月と著しく低く、「形の記憶」が7才4ヶ月で著しく高いということでした。

そして、診断(判断)結果は高機能自閉症...検査上は言語の遅れはないのでアスペルガー症候群(の疑い)ということです。
言語の遅れは「言葉の理解」が4才8ヶ月と実年齢相応、三太の発達レベル内では高い方に位置します。なので、自閉症の中でも知能に遅れがなく言語にも遅れがないという判断基準に当てはまってしまうそうですが、こだわりの強さや変化の弱さ等の所見を考え合わせると、医師によっては高機能自閉症となったりアスペルガーとなったり悩むところだそうです。ただ、文部科学省の分類では、高機能自閉症もアスペルガーも両方「高機能自閉症」となるそうなので、自閉症スペクトラムの中にいるという意味ではどちらかに決める意義は少ないということでした。

三太の場合、形(視覚)の記憶力が非常に高く、今回の検査ではなかったけれどおそらく音(聴覚)の記憶も非常に高いと思われ、早期から字が読めるようになったというのも、字の形を記憶し、それに対応する音を記憶する力によるものだそうです。そして、すでに獲得した文字を手がかりに、これから大きく伸びていく可能性があるそうです。
三太はここ半年で急にいろいろわかるようになってきました。このように説明されると確かにその通りだなぁと思います。物の名前もそれが何かも理解している。音情報も意味はわからずたくさん記憶している。いろいろな経験も理解はしていなくても記憶している。それらのたくさんの記憶が、今、彼の中で秩序を作りつつあるのだと思います。
また、1時間余りの検査も興味を持って行うことができたので、大勢で自由行動よりも、指導者と1対1ですべきことがわかっている状況が好きなようです。そして、これは高機能自閉症の人に多い特徴でもあるそうです。

A研究所の担当の人が言うには、就学までに一度、医療機関で診断をもらっておいた方が、今後いろいろな場面で有利だということです。公的支援を受けるにしても、診断書を要求される場合があるかもしれない。
診断をもらうために訪れたA研究所ですが、本当の診断への道のりは長いです。

2004年5月31日(月)  4才10ヶ月     一番のこだわり

「三太が一番こだわっている事」という意味ではありません。「一番」そのものにこだわっているという意味です。

A研究所での検査の結果が出たので、先週、病院へ行ってきました。Y先生のところにもA研究所からの報告書が届いていました。それで、やはり「診断」は必要でしょうという話になり、どうせなら発達問題や自閉症に詳しいところで診ていただいた方がいいということで、適当なところを探してくださるそうです。

ところで、この日は紙にステンドグラスを描くということをやりました。まず、画用紙に黒で紙一杯に四角を描きます。ここに先生と私と三太の三人で順番に黒い線を1本ずつ書き足していき20片くらいのステンドグラスの下絵を作成します。さらに好きな色を順番につけて完成です。
さて、下絵ができて色をつける段階になって、順番を決めるジャンケンをしました。結果は、一番が私、二番が三太、三番がY先生です。ところが、いざ、私が色を塗ろうとすると、三太が突然、
「三ちゃんがいちばん!!!」
と怒り出しました。Y先生が「ジャンケンでママが勝ったのでママから...」ということを説明しますが聞きません。
三太は2才くらいから「一番」のこだわりが強いのです。小さい子にはありがちなことだし、長介も次郎ももう大きくて譲れる年齢ですから、我が家では三太の「一番」を容認してきました。しかし、この「一番」のこだわりは成長と共に落ち着くどころかひどくなってきてます。それに、ジャンケンで順番を決めるというルールも三太には身についていません。ジャンケンはジャンケン。勝ち負けも理解できますが、それが次の順番を決めるというステップにつながっていないので、今回も、「一番になりたい」こだわりと、「なぜ一番になれないか」がわからないことで、かんしゃくを起こしてしまったというわけです。

また、三太は遊びにマイルールを持ち込みます。トランプやウノのカードゲームが好きで家でも時々しますが、勝手に自分に都合のいいルールにしてしまい、ダメだと言うとやはりかんしゃくを起こします。私としては、かんしゃくを起こされると手におえないのと、「たかが遊び」という軽い気持ちもあって、ついみんなで三太に合わせてしまっているのです。
その話をY先生にすると、
「それでは、これから困りますよね」
と言われてしまいました。それでは、いつまでたってもルールが身についていかない...と。言われてみれば確かにそうです。そうだけれども、癇癪警報発令中の三太を見ると、いったいどうしたらいいのか途方にくれてしまいます。Y先生も、
「本人もキツイでしょうけど、5回に1回くらいは我慢させるくらいの気持ちで、ルールも繰り返し教えていかないとね」
とおっしゃっていました。そうですね。がんばります。

で、結局この日は、
「今日は特別に三ちゃんからどうぞ」
ということになって、三太のかんしゃくはおさまりましたが、この「特別」が理解されたかどうかはかなり疑問です。

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Akiary v.0.51