デンマーク高齢者福祉最前線 2 

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 これは1998年8月18日〜22日、「神戸新聞」に連載させていただいたも  のを神戸新聞社の許可を得てご紹介しているものです。

リハビリテーション


リハ〜良い人生へ「予防訪問」も〜
 

リハビリで歩けるようになったイェタ
さん(94歳)と理学療法士

 「日本人の思いやりの気持ちは素晴らしいですが、施設職員やお嫁さんの親切すぎる介護が、かえってお年寄りを不活発にしてはいないでしょうか?デンマークでは高齢者の残っている能力を全部使って活性化させることに力を注ぎます。」日本で一年間のリハビリ指導経験をもつアネッタ・ヨアンセンさん(オーデンセ理学療法士学校校長)が言うように、デンマークではリハビリテーションに非常に力を入れる。 
 コペンハーゲンの北にあるリュンビュー市の「ムーレゴーデン」は、老人ホーム、デイセンターなどが集合する高齢者総合福祉センター。ここに、理学療法士・作業療法士各6名をかかえる大規模な通所リハビリセンターがある。毎月185クローナ(約3700円)で週2回3ヶ月まで通える。ユーザーは全部で100人、毎日40人のお年寄りが通っている。平均年齢が80歳というのだから驚きである。
 利用者が増えている原因を「高齢者の病気が増えている事、予防訪問でチェックされたお年寄りがやってくる事、骨粗鬆症で骨折する人も最近多いです。」と、ハネ・ピーターセン所長は説明してくれた。
 デンマークの予防訪問は1997年に始まった。自宅で元気に暮らす80歳以上(今年からは75歳以上)のお年寄りを年2回家庭訪問して、病気を未然に防ごうというもの。リハビリも予防訪問も、病気悪化をくい止めて、ひいては入院やプライエムへの入居を減少させようとするデンマークの新しい動きと言える。
 脳卒中で立つこともできなかったイェタさん(94歳)が、嬉しそうに歩行訓練を見せてくれた。ピーターセン所長はリハビリセンターの役割について次のように語る。「私たちの仕事は、単に身体の部位の機能回復だけでなく、食事を作る・食べるなど、普通の日常生活ができるように訓練すること。彼女のように自分で自分の生活が楽しめるようになれば、それだけで人生の価値が変わってくるはずです。」
 リハビリや予防訪問によって、お年寄りが真にいい人生を送れるよう先手をうつこと。それが、長期的に見て社会的費用の削減につながることをデンマーク社会はよく知っているようである。

(高齢者マーケティングプランナー 松岡洋子)

 

<デンマーク・メモ>

高福祉高負担

デンマークの高福祉を支えるのは、高い税金。直接税として所得の五十%以上が徴収され、付加価値税は二十五%。政治汚職が世界で最も少ない国でもあり、「税金はとられるものではなく、預けるもの」という意識が強く、不満を抱く国民は極めて少ない。

 


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