デンマーク高齢者福祉最前線 4 

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1998年8月18日〜22日、「神戸新聞」に連載させていただいたものを
神戸新聞社の許可を得てご紹介しています。

痴ほう対策

各地で深刻在宅者介護〜増える専用デイホーム〜

「ムーレゴーデン」
痴ほう老人のためのデイホーム
 

 デンマークがいま頭を悩ませている大きな福祉問題のひとつに、痴ほう老人の介護がある。プライエム(日本の特別養護老人ホーム)では、入居者の90%が何らかの形で痴ほう症状が出ているといわれる。そして、痴ほう老人専用施設への取り組みは市によってかなり異なりを見せている。
 そんな中で、フレデリクサン市では5年前にプロジェクトを組み、社会省から資金援助を受けてグループホームを建設した。痴ほうのお年寄り7人が、まるで家族のように一軒の家に住むスタイルである。森を一望できる雄大な自然の中の平屋住宅、その外観はごく普通の家である。7人の住人はそれぞれ個室を持ち、30畳もあるリビングは全員の憩いの場。音楽を聴いたり、ゲームをしたりして静かに時間を過ごす。9名の職員が3交代で介護にあたり、ドアにも玄関にも、カギは掛けられていない。
 また、この市ではプライエムに別棟を設け、食堂を中心に6人の個室を配して痴呆のお年寄りが同じメンバーで安心して暮らせるようにしたユニット形式の施設もある。
 しかし、人口17000の小さな市でも、届け出があるだけでも在宅の痴ほう老人は120名に上る。2人の痴ほうコーディネーターが各家庭を巡回し、介護を指導しながら相談にのっているのが現状だ。
 在宅の痴ほう老人の問題はどの市でも深刻で、その対策として最近多いのが「在宅痴ほう老人のためのデイホーム」である。朝の9時から午後3時まで、日中だけのお世話を通して、お年寄りの介護をすると同時に家族にも休息の時間を与えようという通所型施設である。
 ロスキレ市のデイセンター「アスタースバイ」にも最近デイホームが設けられた。
土いじりや料理などをプログラムに取り入れて、毎日8人を受け入れている。
 リュンビュー市の「ムーレゴーデン」では、16人の痴呆のお年寄りを2グループに分けて、各人週1〜2回通えるようにしている。料理を作り、家族を呼んで一緒に食べることもある。
 デンマークには、ユニット形式の痴呆老人専用24時間施設(プライエム内)は約2400人分あり、デイホームも増え続けてはいるがまだまだ足りないのが現状である。

(高齢者マーケティングプランナー 松岡洋子)

 

 

<デンマーク・メモ>

高齢者福祉三原則

△家族の都合ではなくお年寄り自身が選択し決定する「自己決定」△残された能力を可能な限り活かそうとする「残存能力の活性化」△今まで通りの生活を続ける「生活の継続性」ーこれらが高齢者ケアの基本哲学で、尊厳あるお年寄りの生き方を支えている。

 


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