英語上達のコツ 第8回

Better untaught than ill taught.(悪い教育をされるくらいなら、教育されない方がまし)

 上の語に相当するものが日本語にないのは、正しい知識の教育が必要であることを説く西洋合理主義の表われだと思います。中学1年から3年までの英語教育においては、この合理主義に従って、文脈を把握する力となる文法を叩き込んでおくべきです。しかし、教え方を誤れば、文法のための文法となり、文法が自然の会話の流れを止めてしまうようになっては、ミイラ取りがミイラになるようなものです。私の教え方の基本は、(1)会話を導入して、素直にリズムで覚えさせる。(2)既習の知識を足場にして、次の段階を組みたてる。(3)先生と生徒との問答によって、生徒自身が文の構造を自然に身につけるよう指導する。(4)日常生活の中からたくさんの文例を用意し、生徒自身でひとつの規則(文法)を発見する。以上の4項目につきると思います。出来る限り生き生きと絵のように教えることを常に心がけるべきです。

Ex.(1) pencilでは風邪を引いてしまいます。

 pencilはこの世に存在しないのです。a pencil, some pencils, my pencilのように、単語の前に帽子(冠詞)を被せるか、単語の後に s または es の下駄をはかせなければ、言葉は風邪を引いてしまいます。名詞の複数・単数に対して、生理的に反応出来るように、最初から訓練します。単語のテストをする時も、「本」といえば、book ではなく、a book と反応するようにして、日本語では、一冊の本と言わないことを指摘します。my book, the books, two books のように、文の中に入って単語がそのまま動き出せるようにテストしてやる事が大切です。

Ex.(2) 「a bag もmy bagも正しいのに、my a bag も a my bagも、何故言えないの?」

「君たちは、帽子を2つ持っているからといって、a hat と a cap を同時に被って歩くかしら。想像してごらん。」と言います。誰かがクスクスと笑い出して、a my bag も my a bag もおかしいのだ、と理解するのです。

Ex.(3) 「books, pencils, benches のように、複数形の s、es の読み方が[ s ] [ z ] [ iz ] 等と違うのはなぜ?」

「これは発音のためそうなるのよ。日本語でも1本(ポン)2本(ホン)3本(ボン)となるのはどうしてなの?」と聞き返して、「ああ、そうか」と、自然に納得するように、日本語の中に、その例を探すのもよいでしょう。

Ex.(4) Tom has a cap on his head.

 上文の場合には、先生と生徒の問答があれば、文の形をより一層容易に把握出来ます。

 T(先生):"Who ……?"
 P(生徒):"Tom has ……."
 T    :"What ……?"
 P    :"Tom has a cap."
 T    :"Where ……?"
 P    :"Tom has a cap on his head."

 もちろん上文は一例に過ぎません。Tom→Ned, Bill に、a cap→a hat, a bag に、on his head→in his hand 等に、どんどん変えて練習し、先生が疑問詞をさしはさむことによって、その答の部分が、文の中でどんな役割(主語、述語、目的語)をしているかを知ります。

 高学年になった時、並んでいる英語の語順に、素直に頭に入っていくよう、にするためには、こんな基礎的な段階から、少しずつ習慣をつけてい「かねばなりません。

item2a

HOME / 第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回 / 第6回 / 第7回 / 第8回

第9回 / 第10回 / 第11回 / 第12回 / 第13回 / 第14回 / 第15回