お話の様式化/陰陽話昔話など現代に受け継がれて残ってきたお話には、必然的に様式化されたものがあります。様式化することによって、聞き手が聞きやすくなったり、聞き手の期待を裏切らずにお話が展開するという役割がなされます。また、話手も物語の全体像をイメージしやすくなり、様式化を理解することによって、ツボを心得た話方が出来るようになります。 よくある様式化のひとつに、「陰陽話」の様式化というものがあります。例えば「おむすびころりん」というお話があります。これは、正直なおじいさんが、ネズミからお土産をもらって幸せを手に入れる一方、欲張りなおじいさんが、暗い穴に落ちて出てこれなくなるというお話です。「陽」の正直じいさんは、何事もうまくゆき、幸福を手に入れます。それと対比した形で、「陰」の欲張りじいさんは、何事もうまくゆかず、不幸なめにあいます。対比させることによって、こんなことをすればいい事があって、こんなことをすれば悪い運命が待っているということを暗に教えます。 「陽」のお話だけや「陰」のお話だけの物語では、それぞれのお話しの中に比較するものがないので、人間のあるべき姿をある一面でしかとらえることができなくなります。人間は完璧な生きものではありませんので、失敗を繰り返しながら成長するわけですが、現実の社会で失敗ばかり繰り返していては、成長する芽もしぼんでしまいます。そこで、お話の中で上手に失敗を経験することによって、その成長を助けます。まさに、お話が生きる糧となります。「陰陽和して太極となす」という言葉があるように「陰陽話」の様式化は、大きな成長の助けとなるための様式化です。そして、いろんなものを取り入れる豊かな心が、そこから生れてきます。
エプロン作りの基礎ノート―エプロンくらいは作ってみたい
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