昔々、あるところに働き者でやさしいおじいさんが住んでいました。ある日、おじいさんは、山に栗を拾いに出かけることにしました。
「今から行くと、栗のある山につくころにゃあ、昼になる。おむすびを作ってあるから、それを食べてたんと栗を拾おう」
おじいさんは、小鳥のさえずりを鼻歌交じりに山奥に入っていきました。ときどきりすが姿を見せていました。
「わしについてきてもだめだよ。おまえさんのほうが、栗のありかを知っているじゃないか」
そういうと、それっきりりすは姿を見せなくなりました。
「ああ、疲れた。やっと着いたと思ったらもう昼じゃ。ここらで、おにぎりを食べるとしよう」
おじいさんは、木の切株に腰をおろし、背中の風呂敷包みからおにぎりを取り出しました。中に梅干が入ったおいしいおにぎりです。
「では、いただこう。あっ!」
おじいさんは、おにぎりを地面に転がしてしまいました。腰かけたところが少し坂になっていて、おにぎりが転がりました。ころころ、ころころと、おにぎりは、ちょうどあった穴の中に落ちてしまいました。
「あれあれ、せっかくのおにぎりを穴に落としてしまった」
その穴をのぞくと、どこまでも暗い闇が続く穴でした。おじいさんが、落としたおにぎりをあきらめようとしたとき、
「おや、穴から何か聞こえてくるぞ」
「(おにぎりころころすっとんとん。ころころころころすっとんとん。おいしいおにぎりすっとんとん)」
おじいさんは、穴の奥でねずみが、おにぎりを食べて踊っているような気がしました。何とかそれを確かめようと、身を乗り出しました。
「(おじいさんころころすっとんとん。ころころころころすっとんとん。やさしいおじいさんすっとんとん)」
穴の奥ではねずみたちが、愉快に歌って踊っていました。
「おじいさん、おいしいおにぎりをありがとうございました」
「あれは、おまえさんたちにあげたんではない。わしが食べようと思って、うっかり穴に落としてしまったのじゃ。でも、もう食べたのなら仕方ない」
しょんぼりしているおじいさんを見て、ねずみたちは相談しました。
「申し訳ないことをしてしまいました。お詫びに、私たちの宝物を差し上げましょう。このつづらを持っていってください。おいしいものや必用なものが買えるでしょう」
「じゃあ、おにぎりの代わりにいただくとしようか。でも、本当にいいのか?おまえさんたちの宝物じゃないのか?」
「とてもおいしかったおにぎりのお礼です。遠慮なさらずに、どうぞどうぞ」
「じゃあ、遠慮なくいただくとしよう」
おじいさんは、つづらを持って穴から出ましたが、もうずいぶん時が過ぎていました。おじいさんは栗も拾わず、家路を急ぎました。自分の家に着いたときは、もう日が沈んでいました。
「何とも不思議なことがあるものじゃ。穴に落ちてねずみから宝物をもらうとは。欲張らずに過していると、いいことが訪れるじゃなあ。さあ、お茶でも飲んで一休みしよう」
それを盗み聞きをしたいたのが、隣の欲張りおじいさん。
「何々、穴に落ちてねずみに宝をもらったと。よし、わしも山に行ってその宝とやらをもらおう」
次の朝、欲張りおじいさんは、急いで山に行きました。
「確かこのあたり。あっ、この穴だな。深そうで何も見えんなあ。ああー」
「(おじいさんころころすっとんとん。ころころころころすっとんとん。欲張りじいさんすっとんとん)」
欲張りおじいさんが目を見開くと、そこにはたくさんのねずみたちがいて、欲張りおじいさんを不思議な顔で見ていました。
「これはおじいさん、こんにちは」
「挨拶はいいから、あれを出せ」
「あれといいますと?」
「宝が詰まったつづらに決まっているだろう」
「もうつづらはありません」
「うそをつくな。出さないとおまえたちの大嫌いの猫を連れてくるぞ」
「本当に宝はもうないのです。昨日のおじいさんにあげました」
「まだそんなことを言っているのか。ほらもうやってきた。にゃーご!」
「きゃー、猫がやってきた!みんな隠れろ。明かりを消せ!」
猫が来ては、さあ大変。ねずみたちは明かりを消して、猫が入ってこれないような細い穴に、てんでに逃げ込みました。ひとり暗闇に取り残されたのは、欲張りおじいさん。
「おい、真っ暗で何も見えんぞ。出口はどこじゃ!ここは、どこじゃー!」
その後、欲張りおじいさんは、3年と3月穴から出られませんでした。
参考:お話「おむすびころりん」
参考:まんが日本昔ばなし「おむすびころりん」
昔、あるところに正直者で働き者のおじいさんとおばさん、そして、川を挟んで欲張りで怠け者のおじいさんとおばさんが住んでいたそうな。ある日、正直者のおじいさんは山に木を切りに行きました。昼時におばあさんに作ってもらった焼きおむすびを食べようとしたとき、下に落としてしまいころころ転がりだし、ねずみのすんでいる穴に]落としてしまいました、…。
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