絵話
ヘアーサロン天牛
「ヘアーサロン天牛」のご主人はカミキリムシ
お呼びがかかれば、どこへでも馳せ参じます
どんな髪型でもお望み通りに仕上げてくれます
「カッパのようなお茶目な髪型にしてほしい」
と言われれば、「キリキリ」と返事をして
あっという間にお茶目なカッパの出来上がり
「昔風番傘にしてほしい」と言われれば
またもや「キリキリ」と返事をして
あっという間に番傘髪型の出来上がり
腰に長鞘差して、河原町辺りを歩けば
新鮮組よろしく池田屋に立ち寄りて
幕末の大いなる志、探し求めん
「文金高島田にしてほしい」と言われれば
「キリキリ」とまたまた返事をして候
長い触覚巧みに使い、髪を結い上げ候
かんざしは、石清水の竹を切ってきて
小間細工師のような手さばきで削っては、
今風小粋にちょいと差してくれ候
ある夜、送り火の障子に写った影が
まるで天駆ける牛のようだというので
屋号を「ヘアーサロン・カミキリ」改め
「ヘアーサロン天牛」となった次第
カミキリでは、髪を全部切られそうな気がしたのか
心配で鏡の前で震えていたお客様もおられたとか
まわりから早く結婚しろと言われるので
この前、八坂さんで占ってもらったところ
「鴨川と加茂川の交わるところ、
よきこと笹舟で来たり」という事でした
どんな巡り合わせがやって来るかもしれません
川面を見つめて「キリキリ」とビールを飲みました
天牛、今日も今日とて夜空を飛びまわり
みすぼらしい頭に花を咲かせます
もしも夜空に牛の影を見つけたら
それは「ヘアーサロン天牛」のご主人
耳をすますば「キリキリ」という声が
月明かりにしかと聞こえてくるでしょう
参考:絵話「ヘアーサロン天牛」
付記:
髪を切ることが出来るところからか、カミキリムシという名がついているようだ。鋭く強い口をしている。だけどあまりカブトムシやクワガタとは同列に並んでいない。身体はスマートで模様もついているのに。どうも害虫扱いされているところが弱みらしい。つかむとキイキイと奇声を発して、どうも人の世話にはなりたくはない性格をしている。長い触角がイージーライダーのバイクみたいでアウトローに徹しているようだ。
参考:カミキリムシとは
日本のカミキリムシハンドブック
日本には、約800種、亜種を含めると900種を超えるカミキリムシが生息しています。とても人気のある甲虫で、多くの愛好者がいます。その理由は、美しい種や大型種が多いこと、図鑑などが充実していて同定が容易ことなどにあると思われます。そのためか、同定の難しいヒメハナカミキリ類は今ひとつ人気がありません。カミキリムシは探すだけでも面白く、生息環境・発生の時期や時間・訪花植物や寄主植物を調べてフィールドへ出かけ、食痕や産卵痕、脱出孔などを手がかりにして、目的の種に出会えたときの喜びは格別です。
また、生態も興味深く、配偶行動・後食や産卵方法、幼生期・擬態関係など観察テーマは無限といえます。小さな昆虫でも綺麗に撮れるデジタルカメラが普及した今日では、撮影対象としても楽しめます。本書は、そんなカミキリムシの魅力を生態を中心に紹介したハンドブックです。
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