昔話のパネルシアター
きつねのなきいろ
あらすじ:
染物屋のそめ吉が注文を受けたのは、『きつねのなき色』という色でした。そめ吉は、和尚さんの知恵を借りて、無事注文の色に染め上げることが出来るというお話です。
むかしむかし、あるところにそめ吉という男がおりました。そめ吉は小さな染物屋の主で、店の屋号を『そめまる』といいました。
あるとき、そめ吉は、なかなかお客さんが来ないものですから、こんな張り紙をだしました。
『にっぽんいちのそめものやです。どんないろにもおそめいたします。そめまる』
そこへ一人の男が通りかかりました。
「何々、『にっぽんいちのそめものやです。どんないろにもおそめいたします。そめまる』本当かな? 試しに頼んでみるか」
しばらくするして、また男はやってきて、
「ごめんよ。ご主人、いるかい?」
そめ吉は、早速張り紙の効果があったのかと喜んで、店の外に出て行きました。
「いらっしゃいませ。せめまるの主でございます」
「この張り紙に書いてある通り、本当にどんないろにでも染められるのかい?」
「はい、お客様のご希望通りの色にお染めいたします」
「それでは、頼もうか。この着物を明日までに、きつねのなき色に染めてくれ」
と言って、白い着物を手渡すと、男はすぐ消えていなくなってしまいました。
「あっ、お客さん。あああ、いちゃった。・・・」
そめ吉は、店の前で腕を組んだまま考え込んでしまいました。
「きつねのなきいろ、きつねのなきいろ。わからんなあ。あ、そうだ。寺の和尚さんなら物知りだから、知っているかもしれん。さっそく行ってこよう」
ちょうどそのとき、和尚さんがすたすたと店の前を通りかかりました。
「あ、和尚さん、ちょうどよかった。今からお寺に行くところでした」
「やあ、こんにちは、そめ吉さん。何かこのわしに用でも?」
「せっかく仕事が入ったのに、困ったことが起こって」
「どうしたんじゃ?」
「きつねのなきいろに染めてほしいといわれる方がいて、どんな色かとお聞きしようかと思うまもなく、その方、足早にいなくなって、困っているんです。和尚さん、きつねのなききろって、どんな色ですか?」
「そんなの簡単だ」
と言うと、和尚さんは、口をとんがらして、両手を挙げて変な格好をしました。
「大きなしっぽが生えていて、いなり寿司が大好物で、コンコンとなく、あいつじゃよ」
「大きなしっぽに、好物がいなり、コンコンとなく。あっ、そうか、わかった! 和尚さん、ありがとうございました」
「困ったことがあったら、いつでも訪ねてきなさい。じゃあ、わしはちょっと約束があるので」
和尚さん、すたすたとまた歩いていきました。
さて、そめ吉は仕事場に入ると、大急ぎで白い着物をきつねのなき色に染め始めました。
そして、次の日がやってきました。
「ごめんくよ。ご主人いるかい?」
店の外で声がします。昨日の男でした。
「はい、ただいま。昨日のお客様ですね」
「お頼みしていた着物は、出来ておるか?」
「はい。一晩かかって一生懸命仕事をしたおかげで、手前ながら見事なきつねのなきいろ、紺色に染まりました」
そめ吉は、紺色に染まった着物を店の奥から出してきました。
「これはお見事。では、これは染め賃である。一両でいいか?」
「いえいえ、そんなに高くはございません」
「そうか、じゃあ、釣りは取っておけ」
男は、一両小判をそめ吉に渡すと、着物と一緒にあっという間に姿を消しました。
「ありがとうございました。・・・。あれ、この一両小判」
そめ吉の手の中には、小判はなく葉っぱが一枚あるだけでした。
「あっ! だまされた。あのお客さん、きつねだったんだ。もう穴があったら入りたいくらいだ」
そめ吉は、葉っぱをぽいっと捨てると、店の中に入っていきました。
きつねにだまされたそめ吉でしたが、次の朝、外に出てみると、昨日捨てた葉っぱが、本物の一両小判に変わっていました。染めるのが一晩なら、一両に変わるのも一晩。これで、めでたしめでたし。
(パネルシアター「きつねのなきいろ」原作)
「きつねのなきいろ」の台本
アーバン・アニマルとは
楽しんで、ナチュラル染色
〜子どももと一緒に楽しめる染色の本〜
この本では、できるだけ身近な天然染料を使い、身近な材料でできる染色を提案されています。針と糸を使わない絞りは、子どもと一緒に楽しむのにもいいでしょう。自然の中で染料になる植物を探して抽出した色で、ハンカチやシャツが思いがけない色に染まる楽しさ。
天然染料で染めた色は移ろいやすいけれど、移ろう色を眺めるのも風情のひとつ。この楽しいひとときを一度は体験しておきたいものです。
不自然が自然になる
染色といえば、布を思い浮かべますが、最近では髪を染めるのもごく身近なものとなっています。街にはカラフルな頭があふれています。黒髪少女は、絶滅危惧種になっています。年を取ってくれば白髪も増えますが、スーパーには染色用品が棚に並んでいて、家庭ですぐ黒髪に茶髪にと染められます。
一昔前なら髪を染めると、髪を痛めるからよくないといわれていましたが、今はイメチェンとか若返るとか言って、優先する対象が変わってきています。先日、七色に染めている人を見かけましたが、頭が華やいで残りの人生も明るくなったかもしれません。
それでも就活の学生は、整髪して髪の染直しに余念がありません。小学校の入学式もちゃんと染直して、昨日までのわんぱくがおとなしくなります。こうこういうことに注意して、入学式に来てくださいと言われているようです。
一方、天パを信じてくれなくて、わざわざ髪を直にする中学生もいるようです。不自然にすることで自然になるという不思議さ。校則も見えない力に染められているようです。
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