| -前略- |
太陽 | 「何だか、困っているようだけど、何かあったのかい?」 |
娘 | 「実は、両親に頼りになる強い人を探して、その人と結婚するように言われたの。でも、この世で一番強い人が誰だか分からないの」 |
太陽 | 「ははは。そんなことで悩んでいたのか。この世で一番強いのは、この私だよ」 |
娘 | 「え?!」 |
太陽 | 「そうだろう。この世の全てを明るく照らしているのはこの私だ。みんなを見守っているこの私が、この世で一番強いんだ」 |
娘 | 「ああ、そうだわ。この世で一番強いのはお日様。お日様、私のお婿さんになってください」 |
演者 | 「と、そのときでした」 |
(雲、登場。太陽を隠すようにする。太陽逃げるが、また雲を隠すようにする) |
太陽 | 「これでは、私がこの世を照らすことが出来ないじゃないか。わかった、わかった。おまえが一番だ、おまえがこの世で一番強い」 |
(太陽、退場) |
娘 | 「雲さんが、この世で一番強いんですね」 |
雲 | 「いやいや、私より強いものがおる。あいつがこの世で一番強い。あいつさえいなければ、私が一番かもしれないが。ほら、あいつがやってきた」 |
(風、登場) |
雲 | 「わ、わーっ!」 |
(雲、退場) |
娘 | 「雲さんが言っていたけれど、あなたが一番この世強い人ですか?」 |
風 | 「そうとも、この世で一番強いのは、この俺だ」 |
娘 | 「あなたはいったいだれですか?」 |
風 | 「俺は風だ。しかし、この俺よりも、もっと強いやつがいることがわかった」 |
娘 | 「風さんより強いって、それは誰ですか? 教えてください」 |
風 | 「米がぎっしり詰った蔵の壁だ。もう古い古い蔵なのに、いくら俺が強く吹いても、平気な顔をしておる。あの壁は強いぞ。この世で一番強いのは、蔵の壁だ!」 |
(風、退場) |
娘 | 「この世で一番強いのは、壁さんだったのね。壁さんにお婿さんになってもらうわ」 |
(娘ねずみ、退場。壁の後ろに、婿ねずみを重ねて、いっしょに登場) |
壁 | 「風は、わしを倒そうと何度もやってきた。年をとっても、わしはまだ元気じゃ。誰がやってきても、わしは倒れんぞ!」 |
(娘、登場) |
娘 | 「壁さん、壁さん。風さんが言っていたけれど、壁さんが一番強いって本当ですか?」 |
壁 | 「そうじゃとも。風がきても、誰がきても、わしは負けないつもりだ。しかし、最近わしの腹の中で暴れるものがおる。ひょっとすると、そいつにはかなわんかもしれん。・・・。いた、いたたたた!」 |
娘 | 「壁さん、どうしたの?」 |
壁 | 「わしの腹の中で誰が暴れておる。んー!・・。もう我慢できん。わー!」 |
(壁、退場。婿ねずみが残る) |
娘 | 「あなたは、だあれ?」 |
婿 | 「ぼくは、ねずみだよ。君と同じだよ」 |
娘 | 「わたし、お婿さんを探してここまでやってきたの」 | |
婿 | 「ぼくも、お嫁さんを探していたんだ」 |
娘 | 「わたしたち、うまくやっていけるかしら」 |
婿 | 「ぼくたちは最高にいい二人だと思う。結婚しよう!」 |
演者 | 「ということで、二人は、結婚することになりました。だけど、ねずみよりもっと強いものがおりました。この世で一番強いものは、」(太陽を出す) |
演者 | 「お日様ではなく、」(雲を出す) |
演者 | 「雲さんではなく、」(風を出す) |
演者 | 「風さんではなく、」(壁を出す) |
演者 | 「壁さんでもなく、」(娘と婿を寄せて並べる) |
演者 | 「この世で一番強いのは、」 |
| -後略- |
※パネルシアターのキットや完成品には一応説明書は同封されていますが、作り方や演じ方でわからないところがありましたら、お気軽にお尋ねください。サポートはずっとさせていただきます。