パネルシアターの演じ方(退場)退場のポイント台本には、絵人形をどのようにボードに貼り付けていけばいいか、ト書きとして説明してあります。「下手から登場して、中央に配置する」とか、「上手の上の方に貼付する」とか、「ここで絵人形をひっくり返す」とか書いてあります。ですから、絵人形を貼り付けることによって、お話が進んでいくという感覚です。確かにそれは間違いではありません。絵人形を貼付しないことには、話が進まないのですから。 何か新しいことをはじめようとすると、なかなか周りから理解が得られないことがあります。「そんなことしたら失敗するぞ」「時間の無駄になるだけだ」「足ものと見て始めるかどうか判断する方がいい」などなど。当事者の気持ちを汲み取って応援してくれる人が、いかに少ないかに愕然とする。そんなにいけないことをしているわけでもないのに、やったやたらと高い壁に囲まれる。実は素直に気持ちを表現しようとしているだけなのに。 同様にパネルシアターをやろうとするとき、あまりにも台本を大事にする人がいます。先輩に指摘されると、もうそこで自分の素直な気持ちで表現する気持ちがくじけてしまいます。台本に「ここで絵人形をすべて片付ける」とか、「下手からやや上手に移動して配置する」とか、退場や移動の説明もあります。先輩はそこから逸脱するのを恐れます。「全部片付けるのだから、どんどん絵人形をはがしていけばいい」と考えます。「やや上手に移動するのだから、少し移動すればいいんだ。その程度については特に説明がないんだから」と考えます。 でも、パネルシアターでは、この片付けるという、絵人形を舞台からはけるという行為が、非常に重要です。簡単に説明していることの方が、実は難しい演技と思って間違いないです。難しいから説明しづらいのです。やさしいことはこと細かく説明できますから。気持ちの大切さや個人のオリジンを伸ばさなくては、独立していけなくなります。時には新しい登場や退場が、その絵人形を際立てます。冒険者はとかくそれらのハードルを越えていくことで明るい光がさしてきます。 先輩や周りの人どう考えているか考えて、自分のパネルシアターのやり方を考えてみましょう。温故知新という言葉もあるくらいですから、パネルシアターの道しるべが隠れているかもしれません。さて絵人形を貼付して登場させるということは、そこからその場面がはじまるということです。観客にもそのことがすぐ理解できます。ところが、絵人形を片付けるということは、そこでその場面が終わったこと以上に、次の場面への展開になります。絵人形を移動して配置を変えるときもそうです。同じ場面か、もしくは違う場面への展開のために移動するのです。それがうまく出来ないと、変な間が空いて、最悪話の腰が折れてしまいます。うっかり絵人形を落としてしまったり、風で剥がれ落ちたりすることがあります。そのときのばつの悪さとよく似ています。 人形劇の人形の入退場でも同じようなことが言えます。人形を持って登場するときは緊張します。細心の注意を払って登場します。地面から人形が生えてきたかのような登場はしません。袖幕からちゃんと地面があるかのように、その延長線から登場します。パネルシアターの絵人形の登場と一緒です。それで、もう出番がなくなったからと退場するわけですが、登場したときの緊張を忘れて、やれやれということで退場する人がいます。演技者がやれやれと思うと、人形も一仕事終えたような感じで、袖幕の倒れるようにして退場します。それまで立派に演じてきた人形が、最後の最後に失態をさらすのです。次に登場する人形がいくら上手に登場しても、先程の人形が足を引っ張って、次の場面で話が展開していきません。パネルシアターの絵人形も、人形劇の人形も、退場が肝心要のことなのです。
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