人形劇トムテ

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人形劇の公演が終わったあとに

人形劇は誰のもの
「人形劇って、こどもの観るものだと思っていました。でも、こどもよりも大人の私たちのほうが、楽しんでしまって(笑)」
「そうですね。確かに人形劇を観る対象はこどもが多いです。でも、人形劇って、こどものものと決まっていないので、その会場にいる人たちみんなが楽しんでいただけたらと、普段からそういう意識を持って、台本を作ったり、舞台に立っています」
人形劇をしている側にも責任があるのかもしれません。どこかで人形劇は子どもの観るものと言っているのかもしれませんから。

台本は頭の中にある
 「出し物いっぱいあるみたいだし、台本覚えるの大変ですね」
 「実は、ほとんど台本は書かないんです。二人でやっているというのもありますが、うちの人形劇というのは、観客の反応によって台詞が変化します。だから、若干公演時間が伸びたり縮んだりします。客席との掛け合いで劇が進行していくので、大まかなストーリーだけ決めておくんです。あと、盛り込むキーワードと。それは、音響にも影響します。音をテープでするときは時間が制約されますが、今は時間に制約のない生の演奏ですることが多いです」
 「アドリブが出来ないといけないみたい。わたしたちは台本ないとだめ。アドリブきかないから」
 「ほとんどの人形劇団には台本があり、それにそって本読みをして、立ち稽古へと移行し、本番になります。うちは劇団員が二人といういたって小さな人形劇団です。それに、人形劇の構成上、取りたてて台本を書くことはないです。ほとんどが申し合わせだけで本番にのぞんでいます。一種即興的ですので、邪道と言えば邪道です」

オムニバス人形劇
 「ゼロ歳児の子が泣きもせず、じっと見ていたのが印象的でした。短い話が次から次へと出てきたからかと思っていますが。参考になりました」
 「ひとつひとつのお話は短いですが、ぷつんぷつんと切れることなく、最終的には一つの人形劇をなるように工夫しています」
 「参加型っていうのも、原因しているのかなと」
 「参加型のいいところもありますが、参加してもらえなかったら、ただ見るだけの人形劇になってしまい、・・。まあ、それはそれで観れるのでしょうが、本来観ていただきたい人形劇ではないです」
 「舞台に上げてもらって、よかったです。だれを上げるか決めているんですか?」
 「ご希望に応じて決めることがありますが、たいてい失敗します。その子が登場することは、もともと台本にないのですから。誰かが登場するという設定なんです。だから、即興的にその場で決める方がいいのです。その方が、作られたというよりも、今みんなで作り上げていくって感じがします。舞台に上がってきてくれるときは、バリエーションのある舞台に、誘っても恥ずかしがって来てくれないときは、それなりの舞台になります。どんな結末が待っているのか、いつもハラハラドキドキしています」
人形劇を始める前の緊張をなくす方法

思い込みの錯覚
 「二人でされているかと思っていましたが、一人で人形を動かしていたんですね」
 「その演目や場面に応じて、一人でしたり二人でしたりしています。通常、一人で、一体かニ体ぐらいを遣いますが、一つの物語で七体ぐらい遣うときもあります。特に声を変えるわけではありません。その役になれば、それなりの声になるので。紙芝居なんかも同じことが言えます。一人で実演しますが、登場人物が多くても、特別声色を使わなくても、その役をしっかり掴んでいれば、そのような声の調子になります」
 「マイクつけていたと思うんですが、つけていないような感じしました」
 「マイクは補助的につけているだけで、それに頼っているわけではありません。台詞は、直接観客に投げかけているので、意識はマイクを通していません。今日のように盛り上がって、こどもたちが口々に言うことがあります。そういう時に、少しマイクに頼るくらいです」
グループでやる難しさ  人形劇団の廃業

 「人形劇の魅力って何ですか?」
 「改めて聞かれると何と言っていいか分かりませんが、これは人形劇に限りませんが、魅力は、公演が終った後に喜んでいただいて、その時、嬉しい気持ちが胸一杯に広がるところかな」
 「・・・」
 「人形劇の魅力は、多分にその人の好みが影響するように思えます。最近の人形劇は多様化していて、出使いが多く見られます。また、人形劇と演劇の境目がなくなってきていることも確かです。人形劇と演劇がリンクしたような芝居がありますが、それは人形劇なのか演劇なのか判断つきません。表現の媒体として、人形を遣うか生身の人間をつかうかの違いだけで、人形劇も演劇も本来その持つ魅力は同じじゃないかなと思います」
 「・・・」
 「正直なところ、人形劇には好みが有りますので、一概に言えません。不思議に思われるかもしれませんが、人形が出てこない人形劇も存在します。オブジェクトを人形に見立てているようです。人形ぶりといって、人間が人形になる手法もあります」
 「・・・」

プロの人形劇団
 「さすが、プロですね」
 「でも、観客にアマもプロもありません。むしろ素人、人形劇に精通していない人の方がいい事もあります。変に詳しいとその劇を本来の楽しみ方で楽しめない、と言うこともありますから」

大工の弁さん 小さな人形劇場
 「随分小さな人形も作られるんですね」
 「小さくすると客席からはよく分かりませんから、わたしは10cmぐらいのが最小です。それでも分かりませんので、客席に足を踏み入れて、お客さんの手のひらの上で人形を踊らせたりしています。さっきまでは、喜んでいたこどもでも、近くにくるとビックリするんでしょうか。虫のように見えるのでしょうか。手のひらで動き出すと、急に手を引っ込める子がいたりします」
参考:人形劇「スイカどろぼう」公演の一場面

捨てる神あれば拾う神あり
 「うちのように毎年同じ所から公演依頼していると大変じゃいですか?」
 「そうですね。出し物がなくなってしまうというか、・・。今年の夏は工作教室はどうですかなんてとお勧めたところ、了解が得られて、マリオネットの工作教室を開くとかしています。パネルシアターの制作などもオススメです」

隠し絵的人形劇
 「あれって、こどもたちわかってるんですか?」
 「わからないと思います。人形劇を作るとき、劇の見所や大まかなストーリーを考えると同時に、一度観ただけではわからない隠しを入れたりします。たまに気がつくこどももいますが、その時はにんまりとして、『お主なかなかやるな』と思っています。大人にしかわからない隠しを入れることがあるんです」

人形劇のスタイル
 「人形劇のスタイルって色々あるんですね」
 「どのスタイルがいいというわけではないと思います。人形劇団によって、多種多様ですから、こども達には色んなスタイルを見てほしいです。後は生理的に合わないとか、その他嗜好の問題じゃないでしょうか。どこそこの人形劇団のスタイルが好きだとか嫌いだとか、良いとか悪いいとか。前衛的なものは嫌う傾向があるように思います。後で良い評価を得られることがある事を知っている人でさえも」

はじめるきっかけ
 「人形劇をはじめたきっかけは?」
 「あらたまって聞かれるちょっと考えてしまいますが、魔が差しのかもしれません。趣味がこうじて人形劇になったのかもしれません。人はそれを道楽と呼んでいますが。絵本を読むのが好きです。これもどこかで人形劇につながっていますね。テレビやビデオにも出たことあるんですが、どちらかというと舞台での公演が好きです。人形は、手遣い、棒遣い、マリオネットと多種にわたっています」

特効薬はありがとう
 「今日は本当にありがとうございました。こども達と一緒に楽しむことが出来ました」
 「こちらこそありがとうございました。そう言っていただけると人形劇をやったかいがりました。しかし、いざ公演依頼となると、やはり考えが変わられる人もいることは否定できません。現実的には新感覚の人形劇は採算割れになる可能性を秘めています。と言うのは、その劇は見てみないと、どのようなものなのか内容と評価が分からないものです。評価も人によって差が大きくなりがちです。先生方やご父兄方には、そのような冒険好きな人はまだ少ないように思えますし」
 「でも、今日は評価みんな高いですよ。ねえ」
 「人形劇も含め子ども文化をどのように表現して伝えるかは、それを作る側の感性が大きく作用します。こどもの感受性の強い時期に、とんでもないものを見せられたんでは、その後のその子の育成に大きく関わるかもしれません。そうなると、やはりオリジナルを敬遠したくなる心情は分かります。昔ながら教科書に出てくるようなお話しの人形劇を求められるんだと」
 「安心してお任せできるというのは、やっぱり無難な人形劇ということになります。ひとつに逃げているということかなと思います。それは、私たちが反省していかなければならないことです」

表現は自由でない
 「新見南吉作『花の木村と盗人たち』というお話しがありますが、これを人形劇にして制作しようと計画をしていたら、題名に”盗人”と言う言葉が出てくるので、『教育現場ではこの劇は出来ません』という時代もありました。今の時代は全く問題がありませんが。先日、NHKのこのお話しの人形劇が全国ネットで放映されていました」

時代に翻弄される人形劇
 「あんぱんまんはご存知ですよね。遠い昔に、この人形劇をしましたが、その頃は、あんぱんまんを知っている子を探すのが大変でした。今は知らない子を探すのが大変です。あんぱんまんが世に出た当時は、評価が二分していました。悪書として取り扱われて、絵本が本屋に置いていない地域があったということです。テレビ時代が、またあんぱんまんをヒーローとして要求したのでしょう」
 「ちびくろサンボは?」
 「今、評価が二分している絵本ですよね。全国の本屋から姿を消したのは、確か、カルピスのキャラクターが姿を消した頃と同じじゃなかったかと思います。どうぞ正しく判断されて、お傍にいる子たちにいろんな刺激を与えてやって下さい」

人形劇の舞台裏
 「今日は申し訳ありませんでした。公演中、舞台裏に行くこどもがいてて」
 「屋外でやっているときなど、裏にスペースがあると、表のお客さんよりも裏のお客さんの方が多いときがありました。舞台裏が気になって気になってしょうがないんですね。うちの舞台は回転できますので、床がしっかりしていれば回転して見せることがあります。そうすると終演後、舞台裏に押し寄せるということもなくなります」
 「そうしてもらった方がよかったみたいですね。知らなかったものですから」
 「以前観たバリの影絵は、四方が客席でした。どこから観てもいいんですよね。それはそれなりに楽しめるようになっているんです。遠めに見るとプロレスのリングみたいなんです。舞台自体は、民族博物館でその一式を観察することは可能です」
参考:人形劇の舞台裏を大公開

夢のある仕事
 「夢のあるお仕事ですね。日々現実の生活に追われているので、今日のようなひと時は、ほっと安らぎを与えてくれます」
 「夢と現実の境目が、何でできているのかわかりません。もし人形劇でそれが一番わかっている人形劇があるとしたら、影絵人形劇です。影絵は光と影の芸術と言われるように、光と影が織りなす物語です。しかし、影絵には光でも影でもない部分もあります。その部分を魍魎(もうりょう)というんですが、その中に妖精や悪魔が住みついていると言われています。何とも摩訶不思議な世界です。光と影をつなげているのはこの不思議に他なりません。ひょっとすると夢と現実をつなげているのもこの不思議かもしれません。その不思議を知っているのは、影絵人形劇のような気がします」
 「トムテさんは、影絵しているんですか?」
 「影絵は今やっていないです。マジックエプロンに手影絵が出てきたり、パネルシアターに影絵で遊ぶ演目があったりするぐらいです。透視パネルも、一種影絵的な要素がありますが」
 「いろいろあるかと思いますが、羨ましいです」
 「まあ、忙しいくらい仕事があれば、羨ましがっていただいてもいいのですが、昨今、子どもも少なくなり、子どもだけを相手にしている劇団は息詰って来ています。とりわけ児童演劇の中では、人形劇に携わる人たちの収入は毎年最下位ですし、夢と現実の中で40歳を過ぎて転職する人がほとんどです。劇団によっては定年制を設けているところもあるようですし。人形劇界は20代、30代が頑張っている世界です。ちょっとスポーツ界に似ているところがありますね」

得意技の一つ
 「トムテさんには、今日はじめてお会いするのに、どこかで会ったような気がします」
 「夢で見たんじゃないでしょうか? 得意技の一つに、人の夢の中に出るというのがあります。そんなわけないか」

手作り人形劇
 公演終了後に「人形も舞台も手作りなんですね」よく言われます。よく考えると、これって何か変です。手作りでない人形や舞台があるのでしょうか。いやあるでしょうが、ほとんどの人形劇団が手作りの人形劇です。そうでない人形劇に出会うことのほうが難しいです。むしろ「人形も舞台も手作りじゃないんですね」、と驚き珍しがられるのが自然のような気がします。手づくりの人形劇。どこか社交辞令のようでもあり、褒め言葉のようでもあり、あまり深く考えるようなことでもないのかもしれません。

マイクは補助的 マイク
 「マイク、使っているんですか?」
 「マイクは、補助的に使っているだけです。スピーカーから出る音で伝えようと思っていないので。だから、生の声のほうが聞こえてくるでしょう。たまに公演の前後にマイクかしてほしいと言われることがあります。お貸しはしますが、しっかり自分の声で伝えようとしないと、うちのマイクは役立ちません。ピンマイクはつけているのですが、ときどきスイッチOFFになっていて、終演後に気がつくことがあります(笑)。補助にもなっていなくて、後片付けをしながら苦笑しています」

初めての着ぐるみ
 「着ぐるみの人形劇はやっているんですか?」
 「やってはいませんが、過去に着ぐるみに入った経験はあります。にこにこぷん(NHKおかあさんといっしょ)に出てくるじゃじゃまるに」
 「登場キャラクターは、三人ですが、・・」
 「うちは二人しかいないので、ぴっころとのコンビでの登場でした。ぽろりは、夏風邪で寝込んでいるという設定で」
 「夏?!」
 「夏の屋外は、1回に15分入っていられたらいいところで、非常に苦しかったです。でも超人気者の二人ですから、子どもたちの声援で何とか立っていられました。若いときにしか出来ない経験ですね」

本番は一度限り
 生の舞台は一度限りの公演になりますが、ビデオやテレビだと何度か撮り直しができます。カメラテストで試しの演技をして、すぐ本番で演技ができます。舞台だとリハーサルして、緊張しながら長時間待って、いざ本番となります。失敗を恐れず出来るのは、テレビやビデオのほうでしょう。
 また、クロマキー(chroma-key)という技術を使い合成することもあります。生の舞台でほころびを隠すのは、照明を使うことが出来ますが、一応完璧でなくてはなりません。ビデオやテレビ撮影ですとクロマキーを使い簡単に隠すことが出来ます。ブルーバックといって青い布で包み込めばいいんですから。逆にそれを完璧にしようとしたら大変になりますが。

クロマキーによる合成イメージ
ブルーバックの被写体(ネコ)  +  クロマキー(背景)  =  クロマキー(合成)

面白い人形劇
「今日の人形劇、めちゃめちゃ面白かった」
「あいがとう。で、どれがいちばん面白かった?」
「カッパ」
「あ、ありがとう」
 嬉しいのだけれど、とても複雑な気持ちです。 1時間の公演で、カッパはいちばん最初に1分ぐらい出てくるだけで、 セリフも感嘆詞を一言発するだけで終りです。 それが、いちばんよかったというのです。 あとの59分間は何だったのかと考えると複雑な気持ちです。
参考:小さな笑い話「桃太郎物語」  小さな笑い話「ツルの恩返し」



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