人形劇脚本
人形劇「わにくん、ははは」の台本
[あらすじ] わに君は、歯が痛くて泳ぐのも楽しくありません。そのことを小鳥さんに話すと、虫歯を抜いてあげるというのです。わに君と小鳥さんの友情のお話です。
[登場人物]
わにくん
小鳥さん
カエルさん
雲・浮き草・波・虫歯
台詞がなくても列挙しておくと、人形劇をするのに何を作ればいいのか、最低何人必要かわかります。人数が少ないいと役をかねないといけませんし、涙を呑んで省くこともあるでしょう。台本を制作した人だけがわかる台本より他の仲間にもわかりやすい台本がベストです。
また、ここでは、単にわにくんとしていますが、わにのダイルくんとか、名前をつけておくのもいいものです。名前がついていると観客が感情移入しやすくなります。もっとも人形俳優も親しみが出てきて、役作りに役立ちます。
[台本]
わに、下手に登場
わに「やあ今日はいい天気だ。でもおなかもすいたなあ」
かえる、上手から浮き草に乗って登場
かえる「やあ、わにくん、こんにちは」
わに「こんにちは、かえるさん。何してるんだい」
かえる「ぼくは、浮き草の上でのんびり日向ぼっこ。暑くなったらひと泳ぎして、またのんびりと浮き草の上、気持ちいいよ」
わに「ぼくは重くて浮き草には乗れないよ」
かえる「水の上でプカプカ浮いているだけでも、気持ちがいいよ」
わに「それじゃあ、それ!(水に飛び込む)」
ざぶーん!
大きな水しぶきでかえる吹き飛ばされる
かえる「ああー! ぼ、ぼくの浮き草どこへ。乱暴だなあ、わにくんは」
かえる、上手に退場。わに、仰向けになって舞台中央に浮かび上がる。上手が頭で下手がしっぽ。
わに「やあ水の中は気持ちがいいなあ。浮き草に乗れなくても、こうして仰向けで浮いているだけ楽ちんだ。かえるさん、あれ?かえるさん。どこへ行ったんだろう。」
雲、下手から登場、ゆっくり上手に流れる
わに「あの雲、何かに似てるなあ」
書割の雲の裏はパンになっている。途中でひっくり返しパンになり上手に退場。
わに「あ、パンだ。おなかがすいてきたなあ。何か美味しいものはないかなあ」
下手から小鳥登場。わにのしっぽの先に止まる。
小鳥「わにさん、こんにちは」
わに「やあ小鳥さん、こんにちは。小鳥さんはいいなあ。空が飛べて」
小鳥「わにさんは水にもぐったり、自由に泳げて楽しそう」
わに「でも空にパンを見つけても、取りにいけないんだ」
小鳥「何をおかしなことを言っているの? パンなんか空で飛んでいないわ」
わに「あ、いたいいたい!」
小鳥「どうしたの?」
わに「急に歯が痛くなってきた」
小鳥「わにさんは食いしん坊だから、食べるばかりで、歯みがきをしていないんじゃない?」
わに「その通り。きっと虫歯があるんだ。ねえ、お願いがあるんだけど」
小鳥「なあに?」
わに「ぼくの虫歯抜いてくれないかなあ。ぼくたち友だちだろう」
小鳥「私に出来るかしら。本当に虫歯あるの?」
わに「もうずっと歯を磨いていないから、あるに決まってる。あ、いたいたい。さっきよりずきんずきんしてきた。小鳥さんは小さいから、ぼくの口に入れると思うんだ。虫歯を抜いて、お願い」
小鳥「私にやれるかしら」
わに「ぼくの口に入るだけでいいんだから」
小鳥「じゃあ虫歯抜いてあげる。口を大きく開けて」
わに「こうかい、あーん」
小鳥「口の中が見えないわ」
わに「ぼくの尻尾にいたんじゃ見えないよ。もっと近くに来て」
小鳥、しっぽから口に移動する。
小鳥「じゃあ口を大きく開けて」
わに「うん、あーん」
小鳥「口の中って暗くてよく見えないわ。もっと大きくあけて」
わに「あーん」
小鳥「虫歯は口の奥かしら」
わに「そうもっとおく、おっとおく(口をあけているのでうまくしゃべれない口調で)」
小鳥、口の中にどんどん入っていく。
わに「もっとおく、奥のほう」
わに、口をぱっくんっと閉じる。少し間をおいて叫び声とともに口をあける。
わに「ぎゃ、ぎゃーぁ!」
小鳥、口から飛び出して、わにのしっぽに止まる。虫歯もポーンと出てくる。
小鳥「わにくん、虫歯抜けたわよ」
わに「小鳥さん、ありがとう。やっぱり持つべきはともだちだな。これでおいしいものが食べられる」
小鳥「虫歯抜くのに疲れたわ。もう少し、わにくんの尻尾で休んでいっていい?」
わに「ぼくの尻尾が止まり木になるんだったら、休んでていいよ」
雲が下手から出てきて上手に流れる。
わに「あっ、またパンだ。今度は逃がさないぞ」
小鳥「あれはたただの雲よ」
二人上手に退場。雲の書割の裏が「おわり」の文字になっていて、上手に消える。
参考:
パネルシアター「わにくん、ははは」
雲の上の小さなパン屋さん
人形劇「わにくん、ははは」の台本
人形劇脚本集
講師を頼まれたら読む「台本づくり」の本(中経出版) [Kindle版]
大谷 由里子 (著)
できる講師、感動させる講師、人を動かす講師に大切なのは「台本づくり」。これが、著者の大谷由里子先生の講師としての哲学です。年間1億円を超えるオファーがあり、年間300回以上もの講演に全国を飛び回っている大谷先生だからこその、説得力が随所に感じられる1冊です。本書を読めば、「台本づくりをして講演にのぞむ」ことの大切さがわかります。「読む」→「書く」→「観る」で、講師としての実力が身につきます。
フォーマット: Kindle版
ファイルサイズ: 2699 KB
紙の本の長さ: 224 ページ
出版社: KADOKAWA / 中経出版 (2012/4/5
われらが青年団 人形劇脚本集
西 善一 (著)
1984年から滋賀県蒲生郡竜王町青年学級の人形劇に携わった著者。翌年の1985年には全国青年大会で最優秀賞も受賞。そんな著者が感謝の意をこめて贈る至高の脚本集。人形たちの息遣いが聞こえてきます。
単行本: 161ページ
出版社: 文芸社 (2008/12/1)
バリ島ワヤン夢うつつ―影絵人形芝居修業記
梅田 英春 (著)
秘めやかなガムランの音に乗せ、木槌をたたき、人形を操り、太古の物語を語る―妙なる技で迫りくるダランに魅せられ、村のワヤン一座に入門。椰子油の揺らめく炎に人形の影が舞う、スクリーンの奥の暗闇に連綿と受け継がれてきた芸の道を、一座の人びとに手を引かれながら歩む。独り立ちしたダランが愛惜の念をこめて語る、バリのワヤン物語。
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