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人形劇「おか釣り」台本

人形劇「おか釣り」

2004年第8回(人形劇「おか釣り」の台本
なにわ人形芝居フェスティバル優秀賞受賞
原作:紫藤勇市  脚色:カジハラ啓伺

ファミリーフィッシング ファミリーフィッシング (さおコン同梱版)
Let's Enjoy Fishinglife!
ようこそ、お魚パラダイスへ!
舞台は釣りをテーマにしたリゾートアイランド

(司会者、『ここで泳ぐな!』を立てる。下手からおじさん登場。続いておばあさん登場)
おばあさん「何釣ってるの?」
おじさん「今来たばかりなので」
おばあさん「この川は、魚いないんだけどね。昔はいたけど今じゃあ見たことない。どこから来たんかい? 誰かに聞いて来たんかい? いないよ、ここは」
おじさん「今来たばかりなので」
おばあさん「ほんとに魚いないんだって。いうこと信じないの? どこから来たか知らないけど、こんなあぶくが出るような川に魚いるわけないでしょ」
おじさん「釣れなくても、いいんです」
おばあさん「何かあるの? こどもにいたずらされちゃかなわないからねえ。釣しに来たんじゃなくて、何しに来たのよ。怪しいねえ」
おじさん「別に怪しくありませんよ」
おばあさん「魚がいないって言っているのに、何で釣やめないのよ。おかしいじゃないの。この道、小学生も通るから。変ねえ」
おじさん「ですから、釣り趣味なんで、ひょっとしたら魚がいたりしてと」
おばあさん「本当に? だったら、魚いないんだから、片付けて帰ればいいじゃないの。やめないの? しつこい人だね。やっぱり、何かあるのね」
おじさん「ひょっとして魚が釣れるかもしれないじゃないか。迷い込んだ魚がいたりして」
おばあさん「そんなの聞いたことないわよ」
(おばあさんは、捨て台詞を吐いて下手に退場)
おばあさん「ほんとに何しにきたもんだか」
 
(自転車のベルの音。若い男、舞台中央堤を登って登場)
若い男「おじさん、ここで釣りするのに、入漁料かかるんだよね。払ってもらいたいんだがね」
おじさん「ここ、魚住んでないって聞いたけど」
若い男「おじさん、釣りしたことあるんなら、入漁料知っているでしょ。釣れても釣れなくても、川に釣り糸垂らしたら、払ってもらわないとね」
おじさん「だから、魚住んでないって聞いたけど」
若い男「そんなの知らないね。現におじさん、釣りしているじゃないか!」
おじさん「ここの漁協って、何て言うんだい? 看板も何もなかったけど」
若い男「中町漁協だよ。さあ、3000円。領収書は、今手持ちがないから、誰かに聞かれたら、中村に払ったって言って」
おじさん「領収書も出ないなんて、偽者かも知れないじゃないか」
若い男「この辺じゃ、みんな知り合いさ。証明書なんていらないんだよ。嫌ならさっさと帰れよ。釣りなんかするなよ」
おじさん「この川は、あぶくが出て、魚住んでないって、さっき地元のおばあさんが言っていたけど」
若い男「ひょっとして、魚いるかもしれないじゃないか。おばあさんは、釣りなんかしないから、知らないだけじゃないの。とにかく、さっさと金払えよ。今、魚がつれたら泥棒だからね」
おじさん「この川に漁協があるなんて、聞いてないけど」
若い男「おじさん、初めてだから知らないの。おじさんの聞いていないこと、世の中にいっぱいあるでしょ。総理大臣だって聞いていないことあるんだから、自慢にはならないよ」
おじさん「そんなこと言われても、本当かどうかもわからないし。もし、嘘だったら・・」
若い男「疑うんだったら、釣やめればいいじゃないか。何も釣りするなって言っているじゃないんだから。ごねるんだったら、実力行使。強制排除だよ」
おじさん「払うよ。ティッシュでもいいから、領収書書いておくれ」
若い男「自転車にティッシュあるから」
(若い男、退場。おじさんついて堤を降りていく)
おじさん「じゃあ、3000円」
若い男「はい。領収書。これだから、中年親父はいやだね」
(おじさん、ティッシュを持って再登場)
 
(下段の下手に、こども、登場)
こども「おじさん、お金払ったでしょう。嘘に決まっているじゃん。馬鹿じゃないの。こどもには、気をつけろって言うくせに、自分は怖くて払ってやんの。人のときばっかり説教してさ」
おじさん「漁業権というのは、昔からこの川で魚を捕っていた人の既得権でね。誰もが魚を捕れない権利なんだよ。この権利のために、法律があって守られているんだ」
こども「だって、あいつ釣りなんてしてないよ。魚釣りしていたの見たことないもん」
おじさん「今は漁業だけでは生活できない人が多いので、他に職業を持っていることが多いんだ。権利を持っていればいいんだよ」
こども「権利のカードとか見た? 見ていないんでしょう。恐いから、お金出したんじゃないの」
おじさん「こどもには、まだ社会の仕組みがわからないんだ。偽者か本物かなんて、私ぐらいの人生経験つめばわかるんだよ」
こども「へぇー。俺の金じゃないからいいけどね。本当は、取られたんだ。あ、この前ここで魚見たことあるよ。でっかいの死んでいたよ」
(こども、退場するがまた出てきて)
こども「川原で干からびたやつも見たことある」
(こども、退場)
 
(中学生、下手から登場)
中学生「どこのテレビ局の撮影ですか?」
おじさん「・・・」
中学生「話しかけちゃだめなのかなあ。遠くから撮っているのかなあ。邪魔ですか?」
おじさん「撮影なんかしていないよ」
中学生「え、ほんとに? だってここ魚いませんよ。こんなところで釣りしているから、絶対撮影だと思ったのに。損しちゃった。・・・。ドッキリとかじゃないの?」
おじさん「・・・」
中学生「誰かに似ているような。スタッフの人隠れていたりして。撮影中なら言ってください。テレビ見るから。テレビの撮影なんでしょう?」
おじさん「撮影なんかしてないよ」
中学生「じゃあ、何で、魚いない川で釣りしているんですか?」
おじさん「この前、でっかいのが死んでいたとか、川原で見たとかの情報があるんだ」
中学生「そんなの一度も聞いたことないよ」
おじさん「君が何でも聞いているわけないだろう。総理大臣だって聞いていないことあるんだから」
中学生「ほんとにテレビじゃないの? 魚釣りなら、もっと違うところすればいいのに。期待した分腹が立つよ。違うなら違うって、はじめから言えばいいのに。今流行の変態だったりして。変な人いますよー」
(小走りで中学生退場。おじさん、後を追うように下手に移動)
 
(中年男、上手に登場)
中年男「何してるんだい?」
おじさん「あっ、いや、何も」
中年男「何もって、中学生が慌てて逃げて行ったようだけど。何かしたんじゃないの?」
おじさん「ちゃんと入漁料払って、釣りしているだけですから」
中年男「入漁料? 誰に?」
おじさん「中町漁協の、何て言ったかな、えーと、中村さん。3000円ちゃんと払いましたよ。領収書もありますから」
中年男「あんたも下手な嘘つくねえ。魚もいない川に、漁協なんてあるわけないだろ」
おじさん「確かに、払えって言われたんですが」
中年男「何か手の込んだことして、女の子にいたずらでもしようとしているんじゃないの? 私はこの辺の安全協会の役員だけど、釣り人って直ぐわかるんだよね。私くらいの人生経験つむと、どう見てもあんたは、釣り人って感じがしないねえ」
おじさん「さっきの中学生は、勝手にテレビの撮影と間違えて、・・。こっちは何回も違うって説明もしました。向こうが勝手に」
中年男「今どきの子は、テレビって言うと、直ぐついて行くからねえ。で、何テレビって? ほんとにテレビなの?」
おじさん「だから、違うって言っているでしょう」
中年男「ふーん。で、何か釣れた?」
おじさん「何も」
中年男「やっぱりな。釣れないの知ってんだろう。知ってて釣りの真似をしてるんだろ。最近は、手口が結構巧妙なんだよね。テレビカメラ持っていたり、車にテレビ局の名前入れたりしてね。はじめはみんな、何もしていないって言うんだよ」
おじさん「何もしていませんよ。怪しいと言うのなら帰りますよ。帰ればいいんでしょう。金まで払ったのに」
中年男「いやいや、いいんですよ。ここは天下の一級河川ですから、誰が何しようと、私にとがめる権限はありません。私も、人を疑うのが仕事ではありません。まあ、年相応に人を見る目ができてくるというか。あなたの行動がちょっと気にかかったものですから。少しお話を聞いただけなんです。どう、私も忙しい身ですから失礼いたします。まあ、一応報告だけはしておきますよ」
おじさん「何の報告ですか?」
中年男「ああ、いやいやちょっと。・・・。釣れるといいですね」
(中年男、上手に退場)
 
(下手から偽絵描き登場)
偽絵描き「あいつ結構しつこいのに、案外と早く引き下がりましたね。でも、また来ますよ。場所を変えたほうがいいと思いますよ。同好会のよしみで教えてあげます」
おじさん「同好会って? あなた、どなたですか?」
偽絵描き「この辺はいい娘が多いですよ。でも、長くひとっとこにいると怪しまれちゃう。その点、絵描きなんて意外と大丈夫。まあ、絵は好きじゃないんだけどね」
おじさん「絵やカメラの同好会なんて、入っていないんですが」
偽絵描き「だから、カモフラージュに決まっているじゃないの」
おじさん「私は、釣りに来ているだけなんです。何か誤解されているようで」
偽絵描き「何だよ。その態度は。親切にしてやっているのに、お前だって、釣りって格好して、女の子狙っているんだろう。誰だって気づくぜ。魚のいない川で、釣り糸垂れてちゃ」
おじさん「私は、純粋に釣りです」
偽絵描き「この期に及んで、まだ嘘つくのかよ。釣りだったら、もっと釣れるところですればいいだろう。こんな道端で、こんな人が通るところで、誰がつりなんかするんだよ」
(偽絵描き、退場しようとするが、振り向いて)
偽絵描き「嘘つき野郎。危なくこっちのネタ喋っちまうところだった」
(偽絵描き退場。退場した絵描きに向かって)
おじさん「私は、安全協会の役員やっているくらいで、あんたの考えているようなことやる気はないよ」
(下段下手から偽絵描き登場)
偽絵描き「随分な言い方するねえ。いいさ、お互い捕まらないように、くれぐれも。あんたみたいに、最後まで白を切らないとね。勉強になったよ。嘘つきは、最後まで嘘つきでなくちゃね」
おじさん「だから、違うって言ってるだろう。今日は、本当に釣りしにきたの」
偽絵描き「立派、立派、あんたは立派!」
(偽絵描き退場)
 
(下手から自殺志願者登場)
おじさん「何か、探しものですか?」
自殺志願者「人生」
おじさん「深いなあ」
自殺志願者「わかってもらえますか?」
おじさん「無理。人生なんて形がないものに、時間をかけていられない。せいぜいトイレの中で考えるだけ。水を流せば、すっきりとおしまい」
自殺志願者「もう、死にたいんです」
おじさん「この川じゃ、重しつけなくっちゃ、直ぐ浮かんでくると思うよ。あぶくがいっぱい出ているからね。飲むと体に悪いし。魚も住まないって、地元の人が言っていたから」
自殺志願者「そうですか。途中で、油もすごかったし、底見えないんですよ。虫も飛んでいないんですよね」
おじさん「この川は、魚住めないの。虫の死体だって見たことない」
自殺志願者「でも、さっき見ましたよ。鳩とか、猫もいたし、犬は見なかったなあ。・・」
おじさん「そう言ってもね。鳩や猫がいても、野生のものがいなければ、生き物いるってことにならないんじゃないの。ましてこんな川に、幻の魚っていうのは、・・。もともといるのがわかっている魚のことだからね。この川じゃ、幻も見れないと思うよ」
自殺志願者「じゃあ、おじさん、何で釣りしているの?」
おじさん「話し相手がほしいから」
自殺志願者「え? 深いなあ。わからん」
おじさん「仕事もない、家族とも話せない、近所ともどうもね。一日中、一言も話さないってこと、続いたことある?」
自殺志願者「ありません。それほど人生やってませんから」
おじさん「人と会話するって、結構難しいんだよね。自分のことばかり言っていると嫌われるし、人のことばかり聞いていると疑われるし、黙っていると暗いって避けられる。とにかく人付き合いは難しい」
自殺志願者「それでもう、死ぬしかないと」
おじさん「そういう選択もあるね」
自殺志願者「おじさんは?」
おじさん「人が話してきそうで、長い話にならずに、少し話すと行っちまうような、そんな場所で待つこと」
自殺志願者「じゃあ、魚釣りじゃなくて、人釣りですか?」
おじさん「キャッチ・アンド・リリース」
自殺志願者「なるほど」
おじさん「こんなことでもしていないと、話し相手いないんだよね。さて、帰るとするか」
(釣り道具を片付ける)
おじさん「じゃあ」
(おじさん、退場。自殺志願者、意を決して上手から川に飛び込む)
自殺志願者「あ、あっぷ、あっぷ・・。あっ、はぁはぁはぁ、ふうふう、・・」
(岸にたどり着いた自殺志願者、『ここで泳ぐな!』の立て札を『完』に替える。終わり)

後書:
上演は、当劇団用に脚色し台本で上演。登場する人形はすべて棒遣い人形。
頭はすべて張り子(はりこ人形の作り方)でできている。
舞台蹴込は二段形式で、上段が堤、下段が川となっている。

張り子 張り子―伝統から創作へ 張り子師・五十嵐健二の世界
五十嵐 健二 (著)
江戸時代からの伝統をふまえつつ、現代の張り子を創作する五十嵐健二の作品を収録。ゆらゆらと首を振る張り子の虎、招き猫、七福神などの代表作と、張り子の作り方を写真で紹介する。
単行本: 127ページ
出版社: 日貿出版社 (1997/01)

釣り超入門 はじめての釣り超入門 (つり人最強BOOK)
西野 弘章 (著)
サビキ釣り、チョイ投げ、ウキ釣り、ルアー、川の五目釣り、アユの友釣りなど、ビギナーにとって最も手軽に、最も楽しめる釣りをピックアップして、実践の釣りのノウハウを徹底解説。
単行本: 191ページ
出版社: つり人社; 新装版 (2008/07)

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