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英語上達のコツ 第5回

Habit is a second nature.(習慣は第二の天性なり)

 25年間の教師生活を通して通切に感じるのは、習慣の恐ろしさです。出来る限り早い時期に良い習慣を身につけてやることの重要性は、教師なら誰でもわかっていることなのですが、さて実行となると難しいものです。英語教育第1年目で身につけなければならない習慣は次の2つです。

1.音読する:

 英文を音読することが大切だからといっても、声を出して読むように口で指示するだけでは、なかなか実行できるものではありません。1日何回読んだかを表に記入させ、毎日少なくとも5回は声を出して読むようにと、具体的に約束させます。子供は、大人が思っているよりもずっと正直です。読んでもいないのに読んだように書いて来る子はほとんどいません。少しでも記録を伸ばしたいと頑張る姿はいじらしいくらいです。たくさん読んで来た子には、友人の前で読ませ、誉めてやると、その子の励みにもなりますし、周囲の子供たちにも刺激を与えます。正しい発音で、大きな声を出して何度も読むうちに、英文をリズムで把握するようになり、高学年になった時の、速読速解の土台が出来るのです。

2.「反省帳」を作る:

 音読したり、会話したりは、積極的な子には興味がありますが、単語のスペルを覚える段階に入ると、つい面倒くさくなって放り出す子が出てきます。しかし、この時期に「反省帳」を作らせて、テストで間違った単語の正しいスペルを必ず20回練習させます。時には、少し酷な話ですが、100回書かせたことさえあります。単語をひとつひとつ正確に発音しながら何回も書いていると、発音とスペルの関係が、自然に会得出来るようになり、後の長い英語生活の中で、余り苦にせず単語を覚えられるようになります。Practice makes perfect.(習うより慣れろ)です。

 結婚したある女子学生が、こんな手紙をくれました。「嫁入り道具の箪笥の中に、7年間の塾での反省帳を忍び込ませて来ました。これらは私の宝物です。子供が生まれたら見せてやりたいと思っています」私は、この手紙を読んで、胸の中に熱いものがこみ上げてきたのを覚えています。「M子さん、おめでとう。あなたの語学の才能よりも、それらのノートの方が真に、あなた自身のものなのです」と、心から祝福を贈りました。

 毎日、英文を音読し、間違った箇所を訂正し、反省帳に記入する習慣を身につけるだけでも、英語を上達させることが出来ますが、この2点を守り続けることは、翌日の定期考査のために徹夜で勉強するよりも、はるかに難しいのです。反省帳は、一人の子の英語の成長記録であり、涙ぐましい努力の跡なのです。反省帳に貼りつけられたテストの点数を云々するよりも、良い習慣を身につけて、忍耐強い克己心のある子に育てる方がはるかに大切です。「物の考え方」「感じ方」のように目に見えぬものの習慣性は、気付かず放っておかれるだけに、もっと恐ろしい力を持っていますが、これは後編で言及したいと思います。

3.物覚えの悪い子ほど幸せ:

 私の次男が英語を習い始めた頃、私の膝にしがみついて訴えました。何故自分を物覚えの悪い子に生んだのか、兄のように、単語帳を見ているだけで覚えられるように生んでくれなかったのか、と言うのです。「あなたは、何度も書かなければ覚えられないから、初めは自分の方が損だと思っているのでしょうが、書くことが習慣になれば、これほど強いことはないのです。お兄ちゃんが書くのに苦労する頃に、あなたは平気で書けるようになっています。あなたの方が幸せよ」と、習慣は第二の天性であることを、色々な例を挙げて言って聞かせました。やがて、自分の方が幸せだと思うようになり、兄に対する劣等感も消えたようでした。劣等感でさえ、それを早く知り、克服する方法を身につけている人は、勝利者で幸せな人です。