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英語上達のコツ 第14回

You cannot see the wood for the tree.(木を見て森を見ず)

 ハーバード大学に留学しているI君からの手紙が舞い込んできました。「先生、僕は先生の塾で英語を習ったお陰でここまでこれたのだと、いつも感謝しています。しかし、残念ながら大学の講義を聴くには僕の語学力では足りません。講義をテープに吹き込んで、アパートで何度も聞き返していますが、単語は理解出来ても講義の流れがつかめないのです。時々学生達の笑い声までテープに入っていて、悔しくてなりません。塾での教え方の参考にして頂こうと、告白しました」。

 私はこの手紙を読んだとき自責の念で一杯でした。「私の教え方の根本に間違いはなかったか」と考え続けました。単語は解るのに講義の流れが掴めない。まさに、「木を見て森を見ず」の諺通りではないか。細かいところに気を奪われて、大局を見失うような教え方をして来なかったか。口では、常に「作者の主眼点を把握しなさい」と言っていても、具体的によい方法を見つけて指導して来たであろうかと、深く反省しました。もう一度過去の教え方を振り返ってみる大きなチャンスでした。既に10年程前から、速読速解の必要性を感じて訓練していたのですが、高3の10月頃から、様々な主題を持った長文のプリントを準備して、最初は一時間、次は50分、30分と時間を縮めて、1月頃には読むスピードをほとんど同じ速さで読めるように、タイムを測って訓練するのです。速読速解では、辞書を引かせないのが原則で、意味不明の単語にぶつかっても平気で読み進める勇気を与える効用があります。大学入試の備えての推理力や想像力をつける訓練なのですが、この方法をもっと徹底させ順読順解訓練をしてみようと決心しました。

順読順解

(1)英文をグループ毎に音読し、内容を把握:

 生徒が読んでいる時、ポーズの置き方で内容を理解しているかどうか見当がつきます。生徒が陥りやすい最も大きなリスクは、読みは読み、訳は訳と、分離してしまう事です。音読してしまってから「さあ訳しましょう」というのでは、音読の効用は半減してしまいます。途中で意識の流れが中断しても、日本語の順にひっくり返さないで、文頭からゆっくり音読し直すのです。音読と規定したのは、黙読では無意識のうちに語順をひっくり返しているからです。グループ毎に内容を理解しながら音読してゆくべきです。

(2)原文→日本文→原文:

 英文のまま読み下す能力は、なかなかつくものではありません。その訓練として、音読して理解したら、日本語に訳すときは (i) 原文を見ないこと、たとえ原文を見直すにも必ず音読をして、(ii) 語順をひっくり返さないことを守らせます。
 次に日本文を原文に戻す訓練をして、原文に戻らせて初めて、自分のものになったことを確認します。この訓練は大変な集中力が必要です。絵を見て目をつぶったときに、その絵の全貌が網膜に残るように、英文が脳裏にプリントされねばなりません。最初はもどかしいくらい時間がかかります。この方法を会得すると、最終的には読むスピードがつき、英作力もぐんと伸びます。
 いくら順読順解といっても、日本語に訳する時には日本語として理解しやすいものでなければなりません。そこで、日本語に訳するうえの重要なポイントを一つだけあげておきます。

(3)句(名詞構文)を節(動詞構文)にする:

 Ex. Your thorough understanding of the language enables us to improve our English.

  @あなたのその言葉への充分な理解が私達をして英語を上達させることを可能にする。 (名詞構文)
  Aあなたが充分に英語を理解しておられるおかげで、私達は英語が上手になれるのです。(動詞構文)

  上文の@とAでは、当然Aの方が理解しやすい日本語です。何故なら日本文は動詞が主人公であるのに対して、英文は名詞が主人公であるからです。そのことを理解し、名詞構文を動詞構文に転換して訳すことが大切です。