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英語上達のコツ 第13回

Easy come, easy go.(悪銭身につかず)

 高校の入試に合格すれば万事が解決するとばかりに喜んでいる母子に、つれない冷水を浴びせるつもりはないのですが、これからこそ語学の勉強の長い苦しい道程が始まるのです。中学で正しい勉強法を身につけてきたかどうかが試される時です。まず自分の「語彙」のなさに驚き、あわてることでしょう。

 中学時代に、学校のテキスト以外の本をどんどん読んで、(1)最低2000語の「語彙」を貯金しておくことが望ましいのです。本屋の店頭に数え切れない程の子供向けの英語の読み物が出ていますが、出来るだけ自然な英語(オックスフォード版等)に接する方がよいでしょう。また、(2)辞書と親しんでいなくてはなりません。高校に入ると、その重要性が痛いほどわかります。ドロナワ式に「シケ単」を一心不乱に覚えても、試験場に入って、「え〜っと、これは右のページの上から二つ目にあった単語だ」と思い出すことが出来るだけで、肝心の意味が思い出せない―こんな悔しい事はないでしょう。

 「悪銭身につかず」です。面倒くさがらずに、こまめに辞書を引く事です。私が英語を勉強し始めた頃の単語帳を引っぱり出してみると、何ページか毎に同じ単語を引いています。「私は何と頭が悪かったのだろう」と、驚きあきれてしまいます。

 中学の間にもう一つ身に付けておきたいのは、(3)文法力です。文の構造の理解を横軸とし、時の流れ(Tense)を縦軸として、過去、現在、未来を柱に、各々完了形、進行形の計9つがあることをしっかり把握しておくことが大切です。そのためには、(4)英文を作って実際に使えるように練習しておかねばなりません。例えば、「高校基本文例集(英誠社)」を束って練習してみてはどうでしょう。その際大切なのは、そのまま模範例文を暗記するのではなく、自分で作ってみて、自分の間違いやすい傾向を自分自身で発見することです。(5)仮定法は文法事項の中でも一番難解な項目ですから、現在の教科書では、中学課程に入っていませんが、主軸となる仮定法過去・仮定法過去完了のパターンだけは覚え込み、英文で書けるようにしておきたいものです。以上が大ざっぱに言って中学の間に学んでおきたいことですが、言うは易く行うは難し、です。

 高校生を教えてみて一番驚くのは、読解力の乏しさです。中学の教科書から急に一足飛びに抽象的な主題を持った高度なものを読まされるのですから、無理もない事でしょう。この段階では、国語力が要求されます。作者の意図を先取りする力です。それまで漫画とテレビを栄養分にして育ってしまって、勉強と言えば何かを暗記するだけの受験勉強一本槍できた人には、ここらで勉強とは何かを立ち止まって考えてもらいたいものです。

 どんどん毎日積極的に語彙(イディオムを含む)を増やす一方、想像力、推理力を養って行かねばなりません。一つのまとまった英文には、「起」「承」「転」「結」がありますから、「起」から「結」を想像し、反対に「結」から「起」を推理する力、「起」も「結」も解らなくても、「実例」によってさえ全体像を把握する力です。ある意味では今まで積み重ねてきた文法的知識の束縛からさえ自分を解放させねばなりません。お料理にたとえれば、材料(語い)を増やす一方、いかにおいしく食べられるかを工夫し、味付けをし、盛り合わせをする仕上げに向かって一歩一歩近づいているのです。「細工は流々、仕上げを御覧じろ。」と言えるためにはどうすればよいか…次回で説明いたしましょう。