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英語上達のコツ 第6回

Slow and steady wins the race.(急がば廻れ)

 私の塾の、小さな3階の教室を建てた時の話です。お金がないので、最初は2階建てにするつもりでした。「いずれ3階建てを建てるつもりであるのと、2階にしておくのとでは、基礎工事が全く違います。従って、その費用も違ってきます。先生の気まぐれから、後で3階を建てようと思ったって駄目ですから、今、決心してください。」と言われました。この大工さんの忠告があったお陰で、後に3階を継ぎ足すことができて、新たに土地を買ったのと同じ便宜を得ています。どのようなベースの上にはどのような家が建つか、建ててみてわかったのではもう遅いのです。英語教育、いや教育は全て、家の基礎工事と同じではないでしょうか。明日の定期考査で点数を取りたいばかりに、「トラの巻」を見て勉強した子ども、高校入試で合格させたいと、ただ目先の内申を上げるのに血まなこになっている教育ママ。しかし速効をねらって、基礎勉強に手を抜けばどういう結果になるか、安普請が、時には命取りになりかねないのです。「急がば廻れ」の真実が、英語教育にも如実に表れています。そこで25年間を通して得た実践記録をまとめながら、語学教育の意義を考えてゆきたいと思います。


1. 言葉は音から生まれる:

 英語が母国語でないからには、人工的な基礎教育の訓練が必要です。短母音7、長母音5、二重母音8、子音26、合計46個の基礎発音を確実に発音できるようにするためには、まず第一に発声訓練が必要です。なぜなら…

2. 日本語の発声は喉から、英語の発声は腹から:
 手を腹に置いて深く息をしながら、[ : ] と何度も発声させます。英語は、腹式呼吸をする時のように、お腹からですから。

 「さあ、お腹に手を当ててごらんなさい。お腹の皮が動いていますか。」と、子どもたちに尋ねながら実演します。畳の上に仰向けに横になり、お腹の上に本を4,5冊も重ねて練習するように勧めます。本が動いて、お腹から滑り落ちたらしめたものです。

3. 日本語の「ア」と、英語の [ ] [ Λ ] [ ] [ :]

 日本語には「ア」は1つしかないのに、英語にはよく似た音が4つもあることを教えます。舌の位置、口の形を一人ひとり丁寧に教えるのです。[ s ] [ ] [ ], [ ] [ z ], [ l ] [ r ], [ v ] [ b ] 等、よく似て聞こえる音は、耳で聞き分けることができる程に練習します。

 [ f ] [ v ] とか [ ] [ ] などのように、唇をかんだり、舌を出したりする特徴のある発音よりも、[ ] [ u ] [ w ] のように、唇を前に突き出して発音することの方が難しいようです。横側から、先生の口が前に突き出ていることを観察させねばなりません。

 [ p ] と [ b ] のような破裂音は、紙を口の前に立て、強く息を吹きかけて、紙が向こうに倒れるまで練習します。

 [ l ] と [ r ] の発音の区別は、日本人にとっては最も難しいもののひとつです。

4. 母音は赤で、子音は黒で: 

小さなカードに、母音は赤のマジックで、子音は黒のマジックで、発音記号を書き込ませます。日本語だと黒の後ろに必ず赤が来るのに、英語はそうでないことによって、生徒自身が日本語と英語の音節 ( syllable ) の違いを発見します。自分で発見する喜びを子どもたちに与えてやることが、いつの場合でも大切です。そのためには、ひとつのルールを発見しやすいように、たくさんの例題を準備するようにします。