11、心理描写いろいろ
11、心理描写が多岐に描かれている
心理描写が多いと
喜怒哀楽という言葉がある通り、人生にはいろんなことがあります。ワンカットのシーンの連続です。そうすると、ワンカットの絵本であれば、それほど登場人物の感情の変化はないでしょう。話し手は話すのに楽で、聞き手も楽に聞くことが出来ます。
ところが、シーンが多くなればなるほど、そこには登場人物の心理描写が詳しく表現されます。楽に語ることが出来なくなり、聞き手に伝えるのが難しくなります。ましてや聴く子どもたちの心の動きと登場人物の心理がリンクして、複雑に絡み合って話し手の及ばないところに読み聞かせが位置します。
読むか読まないかは自由
絵本を自分で読むときは、表題を見て絵を見て、一瞬その絵本の内容を想像して、読もうとする意思を持って読み始めます。想像通りの始まりであったり、予想に反しても興味を惹くものであったりすると最後まで読み進めます。しかし、興味をそがれると、途中で読むのをやめてしまうかもしれません。読むか読まないかは、その子の自由なのですから。読み聞かせの場合は、話し手が面白いからその絵本を紹介しているのです。その面白さを伝える技術が要求されます。途中で読むのをあきらめた子でも、気づかなかったその絵本の魅力を知ったなら、最後まで聞いてくれます。
感動が人を動かす
絵本の中の登場人物が、泣いたり笑ったりして、その感情の起伏を伝えることが出来れば、聞き手もそれに呼応して気持ちが揺れます。その揺れが、こどもたちの感情を豊かにしていくのです。人の感情もわかり、自分の感情表現も身についていくのです。「一度人を殺してみたかった」「自殺して人生を終わりたかった」「自分では死ねないから、人を殺して死刑になりたかった」など、人の感情や自分の感情の動きを体験していないから、短絡的な感情だけでものごとをとらえます。さらに悪いことに、罪を犯してもそれに対する反省の感情が起こってこないことです。
読み聞かせ中の間
絵本の読み聞かせに意味のあることを知り、有意義であることが理解できたなら、話し手は単なる伝達者とはならず、語り部として役立つ話し手になります。絵本の内容を伝えることに全力を注ぐことになります。ただ絵本を読むのではなく、語るときの間合いも大事にします。こどもたちが、どんな表情で聞き入っているのか、会場にいるこどもたちの顔をよく見ます。すると、話し手はそれに応えるように、見つめるとか、目をそらすとか、笑うとか、沈黙や姿勢を変えるとかの間合いが生まれてきます。間合いは、間ということでもありますが、間は何もなく無ということです。何もないところに何かを表現しているという不思議なものです。話し手は、そんな不思議な絵本の読み聞かせに、こどもたちを誘う水先案内人です。
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